K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Gary Peacock: Eastward (1970) 耳から入る瞬間

  1980年頃、たぶんSJ誌の記事で、このアルバムを知った。とうに店頭にはなくて、当時、なかなか見つけることが出来なかった。中古レコードの情報を持っていなかった、ためでもあるが。再発を待っていたが、熱心に聴いている時分にはなかった。

 そんな記憶がいつまでも残っていた割には、CDの再発も逃し、なんとも気にかかっていた時期が長い。金沢に引っ越してから、レコードに熱が入った理由の一つが、買い逃したレコードへの気持ちに火がついたためであり、このアルバムも火をつけた一枚。希少盤でもないから、早々にディスク・ユニオンで入手できたのだけど。早速は聴いてみたのだけど、なんとなく耳に入らず、少しがっかりしたものだ。レコードの内容、というより、自分のなかに音を引き受ける穴のようなものが空いていなかったことに。だから世評ほどには、という感覚。

 Voicesよりも、3者対等にスポットを当てた

 それでも、確かに耳に入る瞬間、のようなものがあって、B面からかけると、すっと馴染んでいった。東方というタイトルの曲にすっと惹かれた。そして、菊地さんの曲(お嬢さんの曲、なのだろう)。印象は、ポール・ブレイのピアノをもっと朴訥とさせたような感じ。音と音の間で聴かせるようなピアノなのだけど、録音がそのような余韻を捉えていない。そこがとても残念。彼のピアノの美しさ、が十分伝わらない。そこがフォノグラムの銀界とかポエジーと決定的に異なる。多分、ピンとこなかった理由はソコだろう。ピーコックの鋭くドライヴするベースは十分空間的に捉えられていて、まあピーコックのアルバムとすれば、十分なのだろうが。

 その意味では最近再発されたCDは随分と音の感じが変わっていて、案外悪くない。若干、迫力は落ちるのだけど、音は美しい。これで十分、のような気がする。

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Gary Peacock: Eastward (1970, CBS/SONY)
A1. Lessoning (Gary Peacock) 9:49
A2. Nanshi (Gary Peacock) 6:07
A3. Changing (Gary Peacock) 8:28
A4. One Up (Gary Peacock) 5:24
B1. Eastward (Gary Peacock) 13:48
B2. Little Abi (Masabumi Kikuchi) 6:18
B3. Moor (Gary Peacock) 9:46
Gary Peacock(b), Masabumi Kikuchi(p), Hiroshi Murakami (ds)
Photo: Tadayuki Naitoh, Hirqshi Asada
Design: Eiko Ishioka
Engineer: Kenichi Handa
Producer: Kiyoshi Itoh
Released: May 21, 1970
Dates Recorded & Location : #1-6 February 5, 1970, #7 February 4, 1970
Kawaguchi Shiminkaikan