K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Paul Bley with Masahiko Togashi: Echo (1999) 威嚇して終わった勝負であっても

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 随分前から、この録音の存在を知ったが、SACDという高分解能オーディオということなので、そもそもCDとして再生できるのか、またPCオーディオとして再生するので、コピーガードなどのややこしい処置はどうなのか、などなど気になって手が出なかった。最近になって、CDでも出ていたことを知り、ようやく入手。

 晩年のブレイの磨きが掛かった耽美的な音と、富樫雅彦の繊細かつ大胆な打楽器がどのようなインタープレイをするのか、興味津々だった。相性は抜群ではなかろうか、と思うのだけど、どうだろうか。

 聴いてみると、まず録音が良いとの話のとおり、2人の音空間がしっかり捉えられている。ピアノ以上に、打楽器の小さな音から大きな打音までがしっかり捉えられていて、結果としてピアノが音場の周縁、のように思えなくもない。

 そのような印象になるのは、2人が濃密なインター・プレイをしている、ような印象では決してなくて、むしろ、十分「お互いに安全な」距離をとって、音の出し合い、手合わせのような、を行っている感じ。美音合戦、のような。

 でもそれは決して否定的なものではない。ボクはレイシーと富樫の濃密なインタープレイは面白いと思う、しかし、それがある種、定型的な音のやり取りに聴こえるときもあり、あれっと思ったりする。そんな馴れ合い寸前の親密さ、ではなく、刀を振りかざして、威嚇して終わった勝負であっても良いと思うのだ。おかげで、随分と冷たい感じの音に仕上がっていて、存外に、好みの感じになっている。

 そうCDの惹句に、夜中の静かなときに音量を落として聴いてみてくれ(のようなこと)、が書いてあったが、まさに、そのような聴き方が似合うアルバムなのだ。

 

エコー

エコー

 

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Paul Bley with Masahiko Togashi: Echo (CBS Sony, 1999)
1. Offhand 4:19
2. Noteworthy 3:22
3. Highstrung 2:59
4. Mispoke 2:53
5. Construct 2:32
6. Symmetry 5:49
7. Light 2:16
8. Primitivo 2:05
9. Osmosis 4:23
10. Indolence 4:40
11. Spirits 3:28
12. Desolet 5:30
13. Makeover 0:40
14. Exposures 2:42
15. Background 6:22
16. Snaps 6:49
Paul Bley (p), 富樫雅彦(perc)
Released: 18 Dec 1999
Recorded June 10 & 11, 1999 at "Minato-Mirai Hall", Yokohama, Japan