K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

石橋英子: Hyakki Yagyō (2020) ただ聴き手の感情を静かに揺さぶるだけで

石橋英子: Hyakki Yagyō (2020, Black Truffle records)
1. Hyakki Yagyō Part 1 18:17
2. Hyakki Yagyō Part 2 19:14
石橋英子(synth, acoustic sounds, fl), Jim O’Rourke (double bass), Joe Talia (percussion)他Cover and label design by Shuhei Abe.
Back cover design by Lasse Marhaug.
Mixed and mastered by Jim O’Rourke.
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音楽的なことを言葉にできないのだけど、言葉にした瞬間から掌から零れ落ちそうな音が積み上げられている。ただ聴き手の感情を静かに揺さぶるだけであり、それが不思議な時間へボクを追いやる。

日本的なタイトルなのだけど、声を潜めた語り、以外にはそんな要素はない。折り重なる音が聴き手の心象に残す軌跡が造り手の「百鬼夜行」に違いない。

百鬼夜行、という言葉もいつしか死語ではないか。夕闇に紛れた人さらいが現れなくなって、はや半世紀以上が経つのではないか。それとともにあからさまな野垂れ死に、も消え失せたのではないか。つい半世紀前の映画を見よ、死に絶えた祖父母の世代は常にそんな闇と背中合わせで生きていた、ではないか。

だから若い演奏家が云う百鬼夜行は、きっとノスタルジイですらなく、一休禅師の言葉と同じく観念に畳み込まれたものなのだろう。だから美しく、純度の高い音として生まれ変わった言葉なのだ。だから心地よい。それでも、時折響く鈴の音に揺り起こされる感情は何だろう。いつだったか、見えぬ怪に導かれた夜半すぎに響いた、あの音ではないか。

そんな取り留めのない、酔ったときの独り言の円環、そんな感覚に暫し浸る。直接、感情に入り込む感覚が、少し頭蓋の内側に痒みを与える。

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クロニカルな部分は以下を参照。レコードが欲しくなっても以下を参照。ちょっと気になる新婦情報を送って頂くレコード屋さん:

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