ホロヴィッツの長い休演からの復帰から1年後のカーネギーホール。このアルバムのB面、スクリャービンのソナタからドビュッシーの喜びの島、この面が放つ魔界に匂い、のようなものに魅了されている。スクリャービンの曲で魔界の入り口に立ち、その秘術のようなものを覗き見るような感覚、そして喜びの島で漆黒の帳から放たれた、しかし未だ魔界の掌の上で与えられた悦びのような感情の爆発。
喜びの島での演奏の振幅の激しさは、その即興性において、所謂即興音楽の枠を吹き飛ばすぐらいの強度に溢れている。凄まじい。
CDで聴いたこのアルバムをレコードで聴きたく入手したが、今までのアンプでは喜びの島の最後、最内周、での音の濁り・歪みが強く、打音が汚くがっかりであった。
気になって聴き直す。新しいイコライザの位置をColumbiaにし、スピーカをタンノイに。イコライザでの補正により、ややエキセントリックに感じていた音がとても自然な感じに。タンノイが美しく響く。問題の内周に向かう。不思議なことに、一音一音の粒立ちそのままに激烈な打音が響く。驚いた。そのような打鍵であっても、音の艶を失っていない、ことに驚いた。やはりコロンビアのレコードは楽しい、のだ。