K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Nik Bärtsch: Hishiryo (Piano Solo) (2002) ピアノの打音の一つ一つが明澄な鋭いインパルスを伴ってこそ

Nik Bärtsch: Hishiryo (Piano Solo) (2002, Tonus Music)
1. Modul 8_9 06:13
2. Modul 13 07:16
3. Modul 14 03:30
4. Modul 4 05:48
5. Modul TM 02:27
6. Modul 5 06:55
7. Modul 7 04:04
8. Modul 11 05:46
Nik Bärtsch: Prepared Piano, Percussion

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先日、ECMから最近リリースされたEntendreを聴いた。演奏の素晴らしさとともに録音での残響過多が気になって仕方がなかった。打楽器的なピアノの音を台無しにしている、ように思えたからだ。

このアルバムはECMではない、過去のリリース。toshiya氏から紹介頂き、早速、bandcampからDLしたものである。ストリーミングでも良かったが、内容が良いのでしっかりした再生環境で聴きたかった。

 ちなみにニック・ベルチュのアルバムは、ECMのもも含めbandcampで入手できる。

さてHishiryo とは非思量だろうか。禅用語。考えないこと、文字通りである。すべての相対的な観念を捨てた無分別の境地、だそうだ。

演奏は現代音楽でのプリペイドピアノを用いた打楽器的なピアノ演奏でミニマル。録音は実に適正。音の輪郭がクッキリ(これが当たり前で、Entendreがオカシイ)。ピアノの打音の一つ一つが明澄な鋭いインパルスを伴ってこその面白さ、であることを改めて認識する。実に面白い。

日本的というよりは、ガムラン的であり、そんなアジア的な混沌としたミニマルを濾過し、さっと音の包絡線をなぞったような感じ。

この録音から20年近く隔てたEntendreの内容も同じ概念。だから残念な録音が音のキレを劣化させているようにしか感じない。それを乗り越えて、演奏の面白さを感じさせる演奏内容は救い。

この時期のニック・ベルチュのアルバムを聴いても、時間の経過を感じさせない。既に完成された音楽をつくっている。確固たる基盤がある音楽家なんだな、と改めて思った。