K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

佐藤允彦: Penetration (1971) 日本のジャズの切っ先

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佐藤允彦: Penetration (1971, Tohiba )
A. Poise(佐藤允彦) 21:53
B. Route 29 E(佐藤允彦) 18:51
佐藤允彦(p), 荒川康男(b), 小津正彦(ds)
Recorded on 6th November, 1971 at Berlin Jazz Festival, Berlin, Germany.
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ベルリンでのライヴ、といっても、観客は20人くらいだったらしい。べーレントらのアレンジの不手際で大観衆のホールでの演奏をキャンセル。詫びがてらに急遽アレンジされたコンサート、だそうだ。

佐藤は、ピアノにリング・モジュレータを取り付けた、そんなアコウスティックと電気の合わせ技で演奏に臨んでいる。概して、旋律がはっきりした部分でアコウスティックの良さを感じ、空間的な浮遊音のときには軽いモデュレーションが心地よい。

アヴァンギャルドな雰囲気での環境音楽、のようなアルバムで、ホールの残響とエフェクターの効果が溶け合ったような不思議な感覚を生み出していく。何よりも、曲の中での時間感覚が融解しており、どこではじまったのか、どこでおわるのか、そんな意識さえ飛ばしてしまう、素晴らしい。

この時期の佐藤の一連のトリオ作品のなかでも出色の出来ではないか。ジャズだとか、アヴァンギャルドだとか、そんなカテゴライズを越えた素晴らしい作品。

ドラムが富樫から小津に代わっているが、それが些細と思わせる規模感が大きな曲想が魅力。

入手したのは、4チャネル録音(大概の人は知らないだろうな、1970年頃の徒花技術)で、さらにレコード針の歪みをpre-distortionした録音らしい。嫌なイコライズやカッティングを行っている。やれやれ、そうではない普通盤(黒いジャケットのセカンド)が欲しくなったじゃないか。