K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

高橋杉雄:日本で軍事を語るということ 軍事分析入門(2023、中央公論新社)まだ冒頭しか読んでいないが

防衛研究所の安全保障の研究者による新著。

冒頭の文章で、自分の認識のズレを一撃された:

このことが世界に突きつける意味は重い。戦争が起こる可能性の予測ができないのだとすれば、戦争が起こる可能性に常に備えなければならないことを意味するからである。

このこと、とはロシアによるウクライナ侵攻の1年前、世界の誰もがロシアによる大規模な軍事侵攻が予測できなかった、ということ。このようなシンプルな論理で、我々の周辺の軍事的緊張に対する対応必要性を述べている。確かにそうだ、という一撃。論理的には。

戦前は安全保障政策の過半を軍事に委ね、軍事指導者の暴走により国を滅ぼした。近隣諸国を含め、多くの犠牲者を出した。戦後はその反省により、安全保障政策の過半を外交および日米安保体制に委ねた。軍事は忌避された。

Pax Americanaの終焉と近隣諸国の重武装化に加え、ロシアを含む近隣諸国の将来的な動静が読めない、という冷徹な事実を受け止めなければいけない、のだ。一方で、戦前のような政策決定に対する軍事への依存は避けなければいけない。(一部の)左翼陣営(やマスコミ)の宗教的との言える軍事への忌避は、全面的な軍事への依存と表裏一体であり、(一部の)右翼同様、害毒が強い。

健全な安全保障や軍事の議論が、このような書の出版を機会にオープンに行われることを祈って止まない。