K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Bill Evans: Affinity (1978) これも独盤で聴く

Bill Evans: Affinity (1978, Warner Bros. Records)
A1. I Do It For Your Love 7:16
A2. Sno' Peas 5:51
A3. This Is All I Ask 4:14
A4. The Days Of Wine And Roses 6:40
B1. Jesus' Last Ballad 5:52
B2. Tomato Kiss 5:17
B3. The Other Side Of Midnight (Noelle's Theme) 3:17
B4. Blue & Green 4:09
B5. Body & Soul 6:15
Bill Evans(p), Toots Thielemans(harmonica), Larry Schneider(ts,ss, fl), Marc Johnson(b), Eliot Zigmund
Recorded by, Mixed by Frank Laico
Mastered by Stew Romaine
Producer: Helen Keane
Recorded at Columbia Studios, New York, N.Y. from October 30 - November 2, 1978.
Mastered on the CBS DISComputer System, Columbia Studios, N.Y.

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これは、かれこれ40年も聴いている盤。発売が1979年の6月頃で、新譜で米盤を買った。米盤が駄目だった時代だが、不思議とWB盤は盤質が良かった。

最近になって、ルネ氏のブログで独盤の音質を知り、これも入手。

Bill Evans: You Must Believe in Spring (1977)独盤との聴き比べ、そして - K’s Jazz Days

独盤で聴く "Affinity" - 廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

日米欧で大量に販売された盤だったから、安いものだ。

針を下ろして驚いた。音空間が広がる感じで米盤と随分違う。米盤ではシールマンスのハーモニカに被さるような残響がクドい印象が強いのだけど、そこが弱まっている。何よりもエヴァンスのピアノが美しい。高音に駆け上がるときの煌めきの鮮やかさ、に打たれる。

エヴァンスの諸作のなかでは、シールマンスのハーモニカの「利き」もあってポップな印象が強いアルバムだけど、ピアノ自体の響きがこんなに巧く捉えられている、とは思ってもいなかった。

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米盤と独盤

[2012-06-04] 緩い気楽な一枚だけど

webを見ていたら、スロヴェニアで発見されたネアンデルタール人が作った「骨のフルート」の音が流れていた。ただヒューっと息が抜けるような、もの哀しい音だったのだけど、心に引っかかった。音楽の始原的な営みは間違いなく呪術的なものだろうし、ある種の憑依状態へ移行するための手続きのようなものだろう。だから、気持ちの基層に土足で踏み込むような恐ろしさがある。どこかで読んだのだけど、三島由紀夫が、音楽のような恐ろしいものは聴かない、と云ったとか、という話も自ら制御できない感情の基底を脅かす存在だからであろう。

最近、スピーカを変えたりしながら、ピアノの音を聴いていると、時間が飛んでしまって、そんな話が身近に感じてしまっている。気がつくと、ナニモノかに憑依されたように時間が散っている。断片化した時間のなかで、時として非現実的な場に浮かんでいる。

だから職場では、心休まるような音楽を聴きたいと思ってしまった。Bill EvansのAffinity (1978)は、ボクにとって、心休まる緩い気楽な一枚。ジャズを聴きはじめた頃にラジオ番組で聴いて、その洒脱な感じが気に入って手にした。何よりもシールマンスのハーモニカに心惹かれた記憶がある。それに、ビル・エヴァンスフェンダー・ローズの具合もとてもいい。しっかりと70年代末の空気を彼のなかで消化し、違和感のない時代の音を造っている。優れた1枚じゃないだろうか。

その頃はハービー・ハンコックチック・コリアキース・ジャレットを三大ピアニストと呼び、脚光を浴びせた風潮。すでにビル・エヴァンスは過去のヒト扱いだったけど、どうしてどうして。自らのリリシズムを失わないで、時代の音を奏でている。素敵だなあ、と思う。そして、このアルバムを遺してこの世を去った。今、気がついたのだけど、今のボクと同じ齢。早い死だとも思えるが、いやいや十分じゃないか、とも思えるのだ。

仕事場でゆっくりと珈琲を呑みながら、安っぽいスピーカで、こんな音を聴きながら一日を終えつつある。そこに何ともない幸せな感じを感じること、それが嬉しいなあと思うのだ。

アフィニティ(SHM-CD/紙ジャケットCD)

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