K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Lionel Hampton: Stardust (1947)

Lionel Hampton: Stardust (1947)

1. Stardust, 2. One O' Clock Jump, 3. Man I Love, 4. Oh, Lady Be Good

Willie Smith (as), Corky Corcoran (ts), Charlie Shavers (tp), Lionel Hampton (vib), Barney Kessel (g), Tommy Todd (p), Slam Stewart (b), Lee Young (ds)

Pasadena, Aug. 4, 1947
------------------------------------------------------------

ジャズを聴き続けている。ずっと聴いている。気がついたら30年を超えている。一番長くボクに寄り添ってくれている。最近、新しい刺激にうつつを抜かして、聴く時間は激減しているのだけど、決して嫌いになった訳ではない。刺激に疲れたときにゆっくり聴くジャズの美味しさったら、得難いものがあるのだ。仕事もOFFも忙しく過ごした11月も終わろうとしているが、さすがに疲れてのんびりしているときには、古くからの付き合いの良さをしみじみ噛みしめて聴いている。

晩秋から冬にかけての金澤と縁遠いタイトルなのだけど、ライオネルハンプトンのスターダストはボクにとって素敵なアルバムの一つ。ノーマングランツのJATPと同じく,ただのジャムセッションのライヴなのだけど。場所はロスアンジェルスの郊外,パサデナ。ボクはLAは好きじゃないのだけど、パサデナは別。NASAの研究機関(ジェット推進研究所)やカルフォルニア工科大学(CALTECH)があって何回も行ったことがあるのだけど、深夜でも賑やかな町を歩くことができる。聴くと、週に1人くらいしか殺人がない安全な街,だそうだ。ここで食べた生牡蠣とワインの美味しかったこと。あの乾いた大気のもとだから味わえた味なのだろうな。金澤では湿潤な大気のもとでしか味わえないものがあるように。

ボクはライオネルハンプトンのヴィブラホンはとても好きなのだけど、いい演奏にあまりあたっていない。昔RCAから出ていた6枚組LPも持っているのだけど、殆どがスタジオ録音でどうも面白くない。ハンプトンの弾け方が足りないのである。結局,このスターダストとメトロポリタンオペラハウスのジャムセッションのなかの幾つか(Flying homeとかね)がお気に入り。

スターダストはWillie Smithの甘いアルトサックスで始まり,ボクも観客のどよめきに惹き込まれてしまう。次はCharlie Shaversが抑え気味でトランペットを奏でる。伴奏に徹するハンプトンのヴァイブが星屑のようだ。Shaverは星空のもと千鳥足で歩いているようなお茶目なソロ。その次はCorky Corcoranのテナーサックス。このヒトは他で聴いたことはないのだけど、小粒のホーキンスのような手堅いソロで悪くない。独りでカウンターに座って いるような感じ。実は次のソロパートへ期待を高める係なのだ。そのあとが、ボクが大好きなソロパート。ベースのSlam Stewart。弓を引きながらユニゾンで唄う(唸る)のだ。時折,「メリーさんの羊」なんかを交えながらゆらゆらとうたいあげるベースって、なかなか痺れるのだ。あとはハンプトンの締めに向けて短いソロをTommy Todd のピアノ,Barney Kessel のギターで繋いでいく。Kesselのギターが終わるか終わらぬかで打ち込まれるハンプトンの一打で場の空気が一気に変わる。観客が息を呑む感じが伝わる。ハンプトンのソロはシンプルで決して流麗ではないのだけど、ゴツゴツしたスイング感がとても気持ち良くて聴き手の脳髄に強い打音を投げ込んでくる。ソロが大団円に向かうあたりの満足度はとても高く、いつもうっとりしてしまう。

このアルバムでは1曲め以外にハンプトンは入っていないのだけど、良質のスイングジャズのセッションなので悪くない。だけど、天麩羅を食べたあとの天丼の残り、みたいな感じ。美味しいのだけどねえ。

ボクにしては、ちょっと意外な一枚かもしれないのだけど、ジャズは楽しいなあ、と思うときには必ず思い出す一枚,いや一曲なのだ。

日曜なのだけど、さあ出勤。ふう。