K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

猟盤の徒然:Heinrich Neuhaus :Scriabin, Rachmaninov, Prokofiev, Shostakovich


Heinrich Neuhaus:Scriabin, Rachmaninov, Prokofiev, Shostakovich (1946-1958, Denon)

Scriabin:24 Preludes Op.11より, 2 Poémes Op.32 より

Rachmaninov: Prelude  Op. 23より,Etude-Tableau Op. 39より

Prokofiev: Visions Fugitives(束の間の幻想)  Op. 22 全曲

Shostakovich: 24 Preludes Op. 34 より

 

好きな感じの音を求めて彷徨することは、とても楽しい。気持ちのなかに美しく、あるいは麗しく、しばしば悦楽であり、ときとして猛々しく、また気持ちの奥底の衝動を突いてきたり、日々の感情の予定調和を独りで崩してしまう道具,のような在り方。今までジャズを中心に小宇宙をこさえていたのだけど、今年を振り返ると、浅川マキとか、Donny Hathawayとかに気持ちを持って行かれたりするトコロから始まった。そして以前から攻めたかったクラシックの入口も見つかったし。頭に新しい音の穴が開いた感覚がすこぶる気持ち良し。そうそうジャズだってStefano BollaniとかFred Herschに惹かれたことが、とても新鮮。そう、どの音も導いてくれたヒトの姿がその裏側に張り付いていて、いろいろな場所(うつつもCyberも含めて)での新しい出会いもあったなあ、と年末らしい感慨。

音の穴が開いてしまうと、あとは独り自走、ときとして暴走のような音の蒐集。その様子を少し。

今年あらたに蒐集をはじめたクラシックの音のなかで、とても個人的に惹かれた音が幾つかある。別にガイドブックやブログや知人が誉めた訳でも何でもないのだけど、気持ちを鷲掴みにした演奏。たとえばLili KrausのBela Bartok集Richterの6 Preludes and Fugues,OP.87(Shostakovich)。これらは20世紀の音をテーマに、極めてテキトーに山盛り買った中古LPから出てきた。クラシックの猟盤の探索軸は「時空,演奏者、作曲者」の三次元なので、気に入った音がみつかったら、3軸の探査に出動。後者の場合は以下のように探索軸が広がっていった:

− Richter軸(演奏者):Prokofievのピアノ曲や協奏曲が良くて、Prokofievの探索軸ができた

− Shostakovich軸(作曲者):ピアノ曲交響曲や弦楽曲まで聴いた。BernsteinやBorodin Qの探索軸ができた

− 同曲の別録音の探査(時空):Tatiana Nikolaeva、Alexander Melnikov,Konstantin Scherbakovなど

となった。3軸の探索の先に更に新たな探索軸ができる、ような感じ。面白すぎる。

 

さて、このRchterを起点にShostakovichのピアノ曲を調べていくなかで、24の前奏曲が聴きたくなった。Richterは24の前奏曲とフーガ,別の曲。という訳で探してみて出てきたのが、表題のHeinrich NeuhausのScriabin, Rachmaninov, Prokofiev, Shostakovich集。Heinrich Neuhaus(ゲンリヒ・ネイガウスと読むそうだ)はドイツ系のウクライナ人(ヒトラーのソヴィエト侵攻のあと、随分,スターリンにヤラレタ人達ですね)。特に技巧的に強烈な訳でもなくて、訥々と弾いている感じなのだけど、音が丁寧で、その表情が細かく遷移していく感じがとても麗しい。

Scriabin: No. 5 In D Major From 24 Preludes, Op. 11

http://www.youtube.com/watch?v=LhPvTfmFN_Y

Prokofief: Visions Fugitives, Op. 22 (束の間の幻想)

http://www.youtube.com/watch?v=wVBh_PBCrmg

クラシックを語る言葉を持っていないのだけど、とにかく気持ちを掴まれた。なので、Heinrich Neuhausの他の演奏がとても気になってしまった。早速,11枚組CDの全集を入手。こんな感じでCDやLPが短期間に集まってくる。

結論から云うと、この全集の11枚目が冒頭のアルバムなのだけど、冒頭のアルバムが圧倒的に気持ちに合っていて、他は届いていない。ふう。もっとも大半がショパンなのだけど、今のところショパンに対する「音の穴」が開いていないからね!演奏云々以前の状態なのだ。なんて愚痴めいたことを話していたら、クラシック師匠からは「天から降りてきたような演奏にタマタマ当たることがあるからネー」とのコメントで、なるほどと恵心した次第。何回も天からの贈り物はねだれない。

まだオマケがあって、息子のStanislav Neuhaus(スタニスラフ・ネイガウス)の最後のリサイタルのCDを注文していて、昨日届いた。PrikofievもRachmainovもとてもしっくりきて、あらまあ、という感じ。でも懲りたから、これ以上は追わないけどね。

S.ネイガウス/最後のリサイタル(1976,DENON