K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Gil Evans: Live at the Public Theater Vol. 2 (1980) アガルタ----パブリックシアター----スストへと見えない糸のような音が

Gil Evans: Live At The Public Theater Vol. 2 (1980, Trio)
A1. Copenhagen Sight
A2. Zee Zee
A3. Sirhan's Blues
B1. Stone Free
B2. Orange Was the Color of Her Dress, Then Blue Silk
Gil Evans (ep,p), Hannibal Marvin Peterson, Jon Faddis, Lou Soloff (tp), John Clark (frh), Arthur Blythe (as,ss), Hamiet Bluiett (bs,fl), George Lewis (tb), Dave Bargeron (tb,tuba), Pete Levin (synth,clv), Tim Landers (b), Billy Cobham (ds), Alyrio Lima (perc), Masabumi Kikuchi (synth,org)
Producer: 菊地雅章
Recorded February 8th & 9th, 1980 at The Public Theater /N.Y.
Remixed at House Of Music, West Orange, N.J.

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いつの間にか、好きなアルバムを聴き直すシリーズ。これはリアルタイムに発売直後に聴いたアルバム。これでギル・エヴァンスに惹き込まれたのだけど、これが最高峰だった、と思う。

ビッグ・バンドが駄目なボクが、ギル・エヴァンスのアルバムが大丈夫な理由は、どれもがビッグ・コンボ的な演奏で、基本的には奏者のソロが主体。全体的に荒っぽいのだけど、ソロを嵌め込む曲の構造がとても魅力的で、ソロの背景音やつなぎ、が実に刺激的。驚きに満ちているし、そこがとてもジャズ。

聴き直すと、やはり第2集のA面冒頭のピーターソンと、B面冒頭のブルーイェットの管の響きの美しさに惹かれてしまった。それに随所に入っている脱力したギル・エヴァンスの電気ピアノ。空間を切り裂くような、場を制圧するアガルタでのマイルスのオルガンと正反対なのだけど、その存在感たるや。いや、面白いなあ。

 ビートも無理なジャズ・ロックではなく、ジャズとして熟れた感じになっていて、気持ち良い。

アガルタ----パブリックシアター----スストへと見えない糸のような音が見えてくる思いだ。

[2013-10-04]

今日、聴いているのは引き続き漂うな音のようなもの。久々にギル・エヴァンスを聴いている。このアルバムは1980年のニューヨークでのライヴ。メンバーをみると分かるのだけど、最高峰のリハーサル・ビッグバンドであることを物語る陣容。フリー系の強者からコブハムまで、悪い訳がない。どこを切り取っても、素晴らしいソロが詰まっている。

それだけではない。どこを切り取っても、ギル・エヴァンスの色彩や風のような音の流れが吹き出す、ような統一感に溢れている。要は、この音が好きか、嫌いか、だけ。好みであれば、圧倒的に紡ぎ上げられたギルの音世界にLP2枚分の時間、浸っていることができる。たとえ強いビートであろうと、フリー的なソロのもとであろうと、揺るぎない。奏者が自己のスタイルを崩さずに纏め上げられているアンサンブルの一体感、は何回聴いても魔術的であり、騙されたようにポカンとしてしまう。ごく自然にはじまり、自然に終わる。意識を集中した瞬間に、その音の1本1本の凄さに圧倒されてしまうのだ。

ボクが一番好きなのは、このVol.2の冒頭 Copenhagen Sight。マーヴィン・ピーターソン(この人はどうしているのかな?)のソロが秀逸であり、その霧のような漂う音の流れの美しさ、に参ってしまう。30年前に何回聴いたことか。

今日、久々に聴いていると、解体された音の断片のようなものをコラージュして、再び精緻に組み上げられた工芸品のように思えた。改めて素晴らしいと思えた。

当時の雑誌を思い起こすと「絶対的なギル・エヴァンス信仰」のようなものがあって、マイルス・デイヴィス一派のジャズ進化論の一つの駆動軸であることが注目されていた。その文脈から、時の歩廊(Now comes the time)とかPlays Jimi Hendrixなどのロック系フージョンのようなアプローチが褒められていた。だけど、ボクには何回聴いても分からないし、面白くなかった。ラフな作りに見せかけた圧倒的な完成度とか、リズムの必然性のようなものが伝わらなくて、今でも実験作の域は出ていないように思える。その頃の約10年に及ぶ追求の頂点が本作じゃないかなあ、と思う。その要因が完璧に近い奏者、それに菊地雅章のプロデュースじゃないか、と思えるのだ。だから、この時期に大量に吹き込まれた録音は、そのいずれかを欠いているので、この高みに達していないのでは、と思えるのだ。

ニューヨーク 1980 : ギル・エヴァンス・ライヴ・アット・ザ・パブリック・シアター

ニューヨーク 1980 : ギル・エヴァンス・ライヴ・アット・ザ・パブリック・シアター

  • アーティスト: ギル・エヴァンス,菊地雅章,マービン・ピーターソン,ビリー・コブハム
  • 出版社/メーカー: キングレコード
  • 発売日: 1999/01/22
  • メディア: CD
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