K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Chris Pitsiokos: Valentine's Day (2017) インタビューが面白かったけど、演奏も面白かった

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私事を少々。1980年前後の数年間、ジャズを沢山聴いた、レコードも沢山買った。就職とともに、タコ部屋のような寮で聴くこともママならず、寮を出る頃は仕事が佳境。毎日が桶狭間状態。1980年頃に親しんだ奏者のCDを中心にソコソコだった。で、早期定年で金沢に転職した後、独居ということもあり、再び、音を聴くことに時間を割いている。2010年頃から。

何でそんな事を書くかと云うと、その頃のジャズを中心とした世界を理解しようと大いに困惑したこと、が思い出されるから。

・マイルス死後、1980年頃のアイドルだった、ハービー・ハンコックウェイン・ショーターは活動の振幅は小さく、キース・ジャレットは時間が止まっていて、チック・コリアは劣化。その後の「大物」は誰なの的な疑問。

・ディスクガイド的なものを見ると、今の時代の「ジャズの方向性」あるいは「在り方」がさっぱり分からない。多くのディスクが欧州の分からん奏者ばかり、米国のジャズは駄目なのか、的な疑問。

・グラスパー云々はソウル的には面白いが、ECM同様、周縁的な面白さで、中心みたいな扱い(でもないとは思うが)に違和感ありあり、

そんな感じかな。

結局、いろいろ沢山聴いて、周縁も中心もなく様々な分散した動きの中で、様々なものあるなかで、幾つかの「シマ」のようなものがある、という理解。それでも、米国のジャズは健在であり、意欲的な奏者がしっかり存在していることが嬉しかった。またフリー系の音楽も健在で、その影響力がいわいる現代ジャズと交差するような部分が美味しいこと。ソウルやロック、現代音楽あるいは民族音楽などとの音の「循環」のようなものも面白い、そうジャズという「プラットフォーム」の上にどのような「音のモジュール」が組み込まれるか、それを楽しむ感じ、が嬉しい。

そのような音がECMやBlue NoteのようなEstablishされたようなレーベルの上がってくる、そんな感じかなあ。そのような観点で理解すると、柳樂氏のJTNCシリーズも「ある断面」の幾つかを切り取るディスクガイドとしては面白い、とは思っている。

最近、聴いている音のなかで、ニューヨークで活動する奏者達が実に面白くて、フォローしている。そして彼らの音が、AEOCからの流れだとか、Company/ICP/FMPからの流れだとか、ジョン・ゾーンやラザウェルからの流れだとか、を感じるなかで、前述の「困惑」が解消してきた。また幾人かの奏者は、ポール・モチアン菊地雅章ポール・ブレイとの関連性の中で、更なる進化を模索している感じが好ましく、面白いと思っていた。

で、先日、クリス・ピッツィオコスのインタビュー記事を読んだ。衝撃的に面白かった。今のニューヨークのジャズシーンの変化、についての彼の認識が否定的(あるいは悲観的)であった、ということ。ボクがジャズを楽しんだ1980年頃は、その数年前のロフトジャズ運動が揺籃した部分がると思うし、今のニューヨークのジャズを揺籃したような「場所」があったのだろう。彼によると、そのような「場所」が消滅している、というのだ。同時に、「新しい音」への感じ方、見方がとても説得力のあるもので、面白かった。頭がキレる感じ。音はどうなのだろうか、って思った。

ここまでが前置き(ゴメン、年寄りは話が長い)。

記事を読むだけ、は何だから、音も聴いた。Bandcampで即ダウンロード。アルトサックスのインプロヴィゼーション。1曲だけは多重録音で、あとはそのまま。

ボクのなかの印象はピーター・エヴァンスのトランペットに近くて、無機的な冷たさを感じる鋭い音に、高いテクニックで様々な音響的な面白さを付加。フリーキーな音で誤魔化すような部分はなく、とにかく聴かせる。そして、あっと云う間に終わってしまう。面白かった。(音響的にですが)

ブラックストンのFor altoよりは好きかなあ。インタビューが面白かったけど、演奏も面白かった。

さて、次はグループでの演奏を聴いてみよう。 

 

これは多重録音

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Chris Pitsiokos: Valentine's Day (2017)
1. Ballad25 04:47
2. Four Alto (dedicated to Anthony Braxton) 07:20
3. Flutter 02:28
4. Arentwe 02:58
5. Waiting 06:30
6. blue24 04:38
7. Kettle of Birds 04:20
8. Two lines one dotted 07:12
All tracks recorded at Issue Project Room in Brooklyn, NY in March of 2017.
Recorded and Mixed by Chris Pitsiokos
Mastered by Philip White
Cover photo by Anna Ekros