K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Anatoly Vedernikov:Liszt, Ravel, Franck 去りゆく冬へのオマージュ


アナトリー・ベデルニコフ:リスト、ラヴェル&フランク(DENON
 1. ローレライ(リスト)
 2. メフィスト・ワルツ第1番(リスト)
 3. エステ荘の噴水(リスト)
 4. 水の戯れ(ラヴェル)
 5. 組曲クープランの墓」(ラヴェル)
 6. 前奏曲,フーガと変奏曲op.18(フランク/ヴェデルニコフ編)

未だ雪が降ったり止んだり。それでも酔うた肌には少しばかり暖かく感じるような、けぶたい風が吹く夜半すぎ。もう冬がお仕舞いで、春がやってくるんだ、と思った。いつだって、なくなってしまうものが気になってしまう。なんとなく寂しい気持ちになって、酔い覚めの底が深くなっている。

そんな消えてしまいそうな冬へのオマージュのような音。最近、随分聴いているのがアナトリー・ベデルニコフのラヴェル。水の戯れとクープランの墓。水が滴るようなラヴェルの曲で、その水の温度がとても低い。ほとんど凍っているとも云えるような冷たい肌触り。だけど、音色としての冷たさであって、冷たい音色と音色の重なりから伝わってくる風景は、等身大の人の哀しみのような感覚であって、そのコントラストにうっとりとしてしまう。この哀しみを、去りゆく冬への思いに重ねている。

春が待ち遠しい気持ちにもならなくて、呑めば呑むほど冷たくなるような感覚に寄り添うような曲なのだ。