K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

春が天から落ちてきたように、櫻花も咲きはじめる


若宮大橋からみる白山が好きだ。

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「あれ」以来、現実の世界との間になんだか見えないような膜が張ったような、つまり一体感の喪失のようにも思えるような違和感を覚え続けている。航空機がWTCに飛び込む過程が、スローモーションのように記憶されているように、あの怒濤もゆっくりと崩れ落ちるような記憶が果てのない繰り返しになっている。

あの日のお昼頃は駿河台にいて空をみていた。その頃はすべてが一つに繋がっていて、すべてがいつものままで...その後の断章、全てが中空の歪みのなかに落ち込み、世界が変わってしまった。時間というものが,あたりきに非可逆であることを思い知らされた。

あれから長い、そして短くもある時間が過ぎ、春が天から落ちてきたように,金澤にやってきた今週。膜、のような感覚を破りたくて走ってみた。

犀川沿いに下る・下る。川面から吹き上げる風が少し鉄のような匂いがあって、緩みはじめた流水の感触を感じる。長良坂の下から4km下った若宮大橋からみる白山が好きだ。そして白山から北に延びる山嶺の端っこに乗っかる金澤の点景も好きだ。そして程なく櫻花も咲きはじめる。犀川河畔を埋めていく。

早咲きの櫻が六斗の広見で見かけたと聞いて、犀川河畔から蛤坂をあがって古い往還を南へ向かう。大銀杏が見えてきたら六斗の広見。

 

大きな櫻にひとつふたつ。随分遅い春なのだけど、少しだけ暖かな感触を貰った。

 (ピンをはじしてしまって恥ずかしい。)

それにしても、未だ寒い北の地で春をみることなく、未だ家に帰れず彷徨う幾千・幾万かの人々の御魂があり、かれらには遅い春すら来ないことに今更ながら愕然としてしまうのだ。そんな御魂に手をあわせることしかできないから。