K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Woody Shaw: The iron man (1977) 強固なピアノとベースのうえで

 仕事場を引越した。ボクと同じ位の年齢の建屋だったので、耐震強度が足りない。取り壊しになることになって、職場のなかの別の建屋に移った。そんなこともあって、とても疲れた3月になった。古い建屋はそれなりの味わいあって、歪んだ窓硝子が入った鉄サッシ越しに山が見える、という風流な感じ。とても好きだった。新しい建屋は風情はないのだけど、仕事部屋が広くなって、遮音性が良くなった。だから気兼ねなくジャズやクラシックを聴きながら仕事をしている。

 ドルフィーのラスト・デイトを聴きながら思い出したのはウッディ・ショウのアイアン・マン。1977年の録音だけど、1982年頃の発売だったように記憶している。好きなMuseレーベル。京都のRiversideって輸入盤屋の店頭に並んだのを覚えている。ショウが晩年のドルフィーと吹き込んだセッションがあって、そのセッションを回顧するようなアルバム。最盛期のショウが、出発点を振り返る趣向。

 強面のメンバーからして、フリー風の手強い音楽を想像するが、全くそうでない。ドルフィーのアルバムと同じように調性の世界。ドルフィーのアルバムにいつも感じるモンクの音世界、何か空間が曲がったような(ジャケットにダリのような絵を使っているのが象徴的)、のようなものはない。ドルフィーのモーダルな、端正な音を辿ったようなアルバム。素材としてもドルフィーがあるのだろうが、ショウの音世界そのもの。だから、ブラックストンの真っすぐな演奏に驚いたものだ。

 それから30年経て聴き直してみて感じたのは、全トラックに参加しているMuhal Richard Abrams, Cecil McBeeの力。強固なピアノとベースのうえでトランペットが跳ねる、という構図。とても存在感がある。ブラックストンやブライスが「ホーン・セクション」として添えられているようにも聴こえて面白い。

 晩年のドルフィーのような深みや神秘性を感じさせる訳ではないのだけど、1970年代の上質のジャズってこんな感じかな、という線にぴったり乗っていて、何時聴いても満足させられる一枚なのだ。

 



 

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Woody Shaw: The iron man (1977, Muse)
A1. Iron Man
M+ Arthur Blythe(as), Joe Chambers(ds)
A2. Jitterbug Waltz
core+ Anthony Braxton(cl), Victor Lewis(ds)
A3. Symmetry
same as A1.
B1. Diversion One
M only
B2. Song Of Songs
M+ Anthony Braxton(ss), Arthur Blythe(as), Muhal Richard Abrams(p), Cecil McBee(b), Victor Lewis(ds)
B3. Diversion Two
M only
M: Woody Shaw(tp, cor, flh), Muhal Richard Abrams(p), Cecil McBee(b)