K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Anthony Braxton: Dona Lee (1972) ヴェクトルが反転したときに

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なんで長い間、ブラックストンにあまり手が出なかった、かと云うと、コリアとのサークルが面白くなかった、から。とは云え、同年のタウンホール(トリオレコードの偉業)は気に入りだったので、やっぱり何でだろう。なんか小難しい化学式を真似た曲名が気に入らなかったのかもしれない。(哲学書から曲名をとる日本人奏者にも似たようなことを感じる)

このレコードも同時期のセッションで、パリでの録音。悪かろう筈はない。タウンホールでの演奏は、音空間を広げに広げ、その中を飛翔するサックスの音が魅力。このアルバムでは、後年のSteeple ChaseでのIn Traditionのようなオーソドックス(と見せかける)ようなアプローチではなく、タウンホール同様の熱いフリージャズ、そして熱さを感じさせないくらい冷徹に音を出し続けるブラックストン。管の響きの良さに魅了される。そして、ビートが伝統ジャズに近接したり離れたり、その遠心力が弱まった瞬間に、ヴェクトルが反転しジャズへの求心力を示す瞬間、4人が造るグルーヴにときめく。そんなシッカリとしたジャズを聴かせてくれる。

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Anthony Braxton: Dona Lee (1972, America Records)
A1. Dona Lee (Charlie Parker) 9:21
A2 . H-204 3 = HF/G (Anthony Braxton) 11:50
B1. You Go To My Head Part One (Cook) 6:27
B2. You Go To My Head Part Two (Coo) 10:15
B3. 60666 C -66 M (Anthony Braxton) 5:04
Anthony Braxton(as), Michael Smith(p), Peter Warren(b), Oliver Johnson(ds)
Producer: Pierre Berjot
Recorded February 18, 1972 in Paris.

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