K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Bill Evans: Everybody Digs Bill Evans (1958) ピアノの音の輝き

 そろそろ旧いレコード盤を買い集めることを止めている。気になるレーベルのものを幾つかピックアップできたので、それを何回も聴いている。その後の再発盤よりも音が綺麗なものもあれば、同じようなものもあって、とても面白い。ピアノの音の輝きを聴きたい、という欲求から、ビル・エヴァンスセロニアス・モンクの盤に眼が向いている。

 この数年は、死の影が甘く薫るような晩年の演奏を聴いていた。新しい録音なので音質も良く、ビル・エヴァンスの響きを楽しめるから。最近のレコード蒐集のなかで、Riverside盤の音質の良さが喧伝されていることに気がついた。ヴァン・ゲルダーのBlue Noteとか、ロイ・デュナンのContemporaryは日本盤でも音質の良さを感じることが多いのだけど、Riverside盤は音に印象がなく、意外な気分になった。そんな訳であまり高価でない盤を探して、手に入れることにした。

 これはモノラル盤。時期的に人気のラファロとの共演盤の前なので、そんなに高価じゃなかった。やはり音が良い。OJC盤と比べると、高音の伸びは弱いが、中音域の分厚さはなかなか。ビル・エヴァンスのピアノが骨太で強いタッチで聴こえる。OJC盤は神経質な繊細なピアノに聴こえるので面白い。

 そんな音質の違いを聴くような愉しみが些細、と思えるほど演奏の良さに惹かれた。サム・ジョーンズは支えるタイプの奏者だし、フィリー・ジョー・ジョーンズもサポートに徹した控えめの演奏。だから彼のピアノそのものに集中できる。だから意識が途切れることなく、ピアノに浸ることができる。ところどころ散りばめられたソロの美しさにも眼を見張る。ラファロやゴメスとの共演盤はインタープレイがスリリングで、それ故にピアノも次々に緊張感を孕んだ音が出ていくのだけど、気持ちを弛緩させるような部分が足りない。その意味で、このアルバムは気持ちをゆっくりと溶かしていく。楽しい。盤の違いなんかどうでも良くなった。当たり前のことに、当たり前のように気がついた。やれやれ。

 

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Bill Evans: Everybody Digs Bill Evans (1958, Riverside)
   A1. Minority 5:20
   A2. Young And Foolish 5:48
   A3. Lucky To Be Me 3:35
   A4. Night And Day 7:12
   A5. Epilogue 0:38
   B1. Tenderly 3:29
   B2. Peace Piece 6:37
   B3. What Is There To Say? 4:49
   B4. Oleo 4:04
   B5. Epilogue 0:38
Bill Evans(p), Sam Jones(b), Philly Joe Jones(ds)