K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Bill Evans: 'Complete recordings' at Shelly's Manne-Hole, Hollywood, California (1963) ボクのcomplete盤

Bill Evans: 'Complete' at Shelly's Manne-Hole, Hollywood, California (1963, Riverside Records)
1. All The Things You Are
2. Lover Man
3. Love Is Here To Stay
4. 'Round Midnight
5. Stella By Starlight
6. Who Cares?
7. The Boy Next Door
8. Isn't It Romantic?
9. Blues In F/Five
10. What Is This Thing Called Love?
11. How About You?
12. Everything Happens To Me
13. In A Sentimental Mood
14. My Heart Stood Still
15. Time Remembered
16. Wonder Why
17. Swedish Pastry
Bill Evans(p), Chuck Israels(b), Larry Bunker(ds)
Recording: Walt Heider
Recorded in Los Angeles; May 14 and 19, 1963.
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以前書いたが、エヴァンスのRiverside音源としてはOJC発売直前に出されたComplete集が最も端正な音を残しているように思う。それはモンクも同じ。初期の音源はともかく、後年の音場の雰囲気はとても半世紀以上前の音源と思えないものもある。瑞々しい、のだ。忠実にCDの16bitのダイナミックレンジに情報をtransferしたような印象。だから個性がやや乏しく、印象が薄いのかもしれない。

難点は無造作な時系列・セッション順の収録になっているため、記録以上の存在感しかなく、アルバムとしては楽しめないこと。そこでオリジナル盤と同じ収録のアルバム、ライヴは全セッションを集めたcomplete盤を編集して楽しんでいる。電子データを纏め直すだけだから、ディジタル音源ならではの良さ。

最近聴いているのは、Riverside最後、 契約上の消化試合と云えなくもないシェリーマンズ・ホールでのライヴ。勿論、ラファロ逝去後で、モチアン脱退後なので、全く注目されていない盤。ディスク・ガイドなどで見かけた記憶もない。またヴィレッジ・ヴァンガードのようなアルバム+未発表曲の、complete盤もない。オリジナル盤8曲、CD9曲に対し「ボクのcomplete盤」は17曲。

このライヴのcomplete盤を作ったら、これが案外楽しめる。世評通り、の地味なアルバムで、ライヴだけど世を去る前の鬼気迫る迫力もないし、ヴィレッジ・ヴァンガードのような張り詰めた空気から生まれ出る結晶のような音もない(ヴァンガード自体は煩いのだけど、そのコントラストもまた素晴らしい)。確かに消化試合のような、淡々とした運び。

イスラエル、バンカー(両名とも実に好み)の少し控えめだけど、実に堅実な支えのもと穏やかに弾くエヴァンス。曲を続けていくと、明らかに鍵盤の上に乗り出すような、気持ちが上がっていく様子が伝わる。その気持ちが温まっていくような時間を共有する、感覚が実に楽しい。

多分、ライヴに行く面白さはそれで、1曲めでは楽器も奏者も温まっていない、ことがあって、曲を重ねる中で「何か」が破れ、奏者も楽器も唄う。音が粒立ちはじめる。そんな時間の流れを伴にする、それが愉しい。

そのライヴ感覚がエヴァンスを聴きながら感じる、とは思わなかった。本当のところ、演奏順かどうかもわからないのだけど、そんなことはどうでもよくて、そう感じたことが嬉しいのだ。

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At Shelly's Manne Hole

At Shelly's Manne Hole

  • アーティスト:Evans, Bill
  • 発売日: 1991/07/01
  • メディア: CD