K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Bill Evansについての2つのcomplete recordings

2つのcomplete recordingsが手元にある。

1つはThe complete Riverside recordingsで、オリジナル?は米盤で1984年発売。持っているのは日本盤で1985年発売。キープニューズによるOJCでの再発が盛んに行われていた時期だ。LPレコード 18枚組。

Bill Evans - The Complete Riverside Recordings (1985, Vinyl) | Discogs

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もう一つはThe complete Village Vanguard recordings, 1961。Concordによるヴィレッジ・ヴァンガードの完全盤。録音機が落ちたことによる中断まで入っている。2002年に日本で最初発売され、LPレコードは米国のみで2014年の発売。LPレコード4枚組。

聴いてみて分かることは、物理的な媒体としてのレコードの出来は圧倒的にヴィレッジ・ヴァンガートのセットのほうが手をかけている。重量盤だし盤面の仕上がりも美しい。1面当たりの収録時間も短く、内周側での音の劣化を抑えている。

しかし音質面では圧倒的に良いのは日本ビクターのリヴァーサイドの完全収録セット。18枚にキチキチに収めているし、盤も標準的なものなのだけど、とても音の輪郭がしっかろしていて、ピアノの音も美しい。多分、OJCもそのような音なのだろう(これから確認してみる)。面白いのは観客の雑音レベルが低い。つまり演奏にダイナミックレンジを一杯与えて、弱音の背景音を落としている。オリジナルのモノラル盤より音圧は若干落ちるが、音の美しさでAlternativeとして良い。同時期のCDやその後のHDtracksでのHigh resolutionに近い音色。

一方、Concordによるヴィレッジ・ヴァンガートのセットでは音圧をオリジナルのモノラル盤に近づけてあって、かなりのものだ。観客の雑音、拍手もモノラル盤同様のレベル。しかしピアノやベースの音が膨れたような感じで、音の輪郭が完全に滲んでいて、モノラル盤とは似て非なるもの。同音源のCDを聴いてみたが、全く同じ。ディジタルでのre-masteringの過程で、かなり強いイコライズが入っている。

The complete Riverside recordingsについては、エヴァンスのソロ集(Milestone盤)の第2集がCDでしか出ていないので、購入した。しかし、盤の編集が録音順でアクセスが実に面倒で、また各録音についての記録が分散していて不親切。買って、しまったと思ったものだ。まさかにも、こんなに音が良いとは思わなかった。

追記:

Village VanguardのOJCは持っていなかった。How my heart singsのOJC盤を聴くと、音色としてはビクターのcomplete riversideと同じ感じ。強いイコライズはかかっていない。ただ少しレベル上げすぎのキライがあって、ピアノの音が若干歪んでいる。日本ビクターのcompleteのほうが良い。

追記2:

日本ビクターの単品でのLPについて質問があったので聴いてみる。

Explorationの古いビクター盤(1974年)は音が軟化していて、日本盤固有のあの感じが強くイマイチ。

https://dailymusiclog.hatenablog.com/entry/BillEvansExplorationsSeveraldiscs

ヴィレッジ・ヴァンガードについてはWaltz fot Debbyの1975年の日本ビクター盤(SMJ-6118)はそんなに悪くない。録音レベルが若干高く、僅かに歪んでいる。トラックによって、モチアンのブラシが雑音っぽくて不明瞭が小さな不満。complete盤はレベル低めであるが、ブラッシの音などはクリア。ビクター盤単品でも時期、アルバムによるバラツキは大きい印象。人気盤は気合いが入っているのだろう。

追記3:

結局、モノラルのオリジナル盤がバランス良くダイナミックレンジを圧縮している印象。音圧が強く、観客の雑音もうまく拾っている。神業やね。同じマスターからでも、こんなにバラツキがあるのはカッティングでのイコライズなのかなあ、とか思ったりしている。