K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Sebastian Macchi他 :Luz de agua/Otras canciones (2015) 秋を感じたから春にやってきたアルバムを

 アルゼンチンのフォークロア。ジャズや現代音楽など、さまざまな音楽が垣根なしに流れ込んで、21世紀の心地よい音楽としか形容のできない、音に仕上がっている。この数日、風や雲、光に秋を感じたから、春にやってきたアルバム、微温のラテン音楽、を聴きたくなってきた。
 前作:Luz de agua(2005年)は、数年前には随分聴いていて今でもお気に入りのアルバム。ブラジルの音のよりも温度が低く、また水や光といった空間に様々な彩りを与えるような要素が、音という異なる物理現象で表わされる妙、を愉しむことができような感覚。何も奇抜なことをやっているのではない。感情のなかにゆっくりと、そのような心象風景がくみ上げられていくような、音の流れ。暑くも、冷たくもない、ちょうど良い湿気を孕んだ風が通り過ぎていく。
 このアルバムでは前作ほどには、そのような心象は喚起しない。それは、出来が悪いという意味ではない。もう既に、ボクの中でできあがっている、このような音を聴く感覚のなかで、新しい座標を見いだすような聴き方だからだ。そして十分に満足させるだけの美しさが、鮮度の高い音が部屋の中に流れ出している。
 アルゼンチンのこのような音楽のアルバムを手にするとき、そこはかとなく期待する音、そのものが詰まっている。その意味で期待通りであり、ただ予定調和であることに対して少しだけ楽しい苛立ちを感じさせるアルバムなのだ。

 



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Sebastian Macchi, Claudio Bolzani, Fernando Silva :Luz de agua/Otras canciones (2015)
01. Crepúsculo en el campo de Gualeguay
02. Los viajes
03. Otro atardecer
04. Aguasílabas
05. Músicas que la adormilaban
06. Ceibas
07. Gran ciudad
08. Mayo
09. Lourdes
10. Tarde de mayo
Sebastian Macchi(p, vo), Claudio Bolzani(g,mandolin, vo), Fernando Silva(b, cello, g, vo)
guest: Carlos Aguirre(per on 9)Mariano Cantero(ds, perc on 3, 2)Pedro Guastavino(vo on 9), Luciano Cuviello(ds on 1), Jjuan Pablo di Leone(fl on 2, 8)