K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

半世紀前の記憶


 昨日の金沢は台風の影響か、強い風。小松へのバス便を待つために、香林坊のバス亭でぼんやり、木々が揺れているのを眺めていた。

 金沢出身で東京に住んでいるK君が、この香林坊の光景が好きだ、と云っていたことを思い出した。ボクもこの光景は好きだ。大和の前から道路を挟んで日銀のほうを見る光景。ボクのなかでは金沢で真っ先に思い浮かぶ景色。なぜだろう。

 ボクは幼い頃、やはりこの場所に居た、に違いない。5月くらいの明るい陽光のもと、枝が風で揺れている。透かしたような緑が眩しい。それだけの記憶。ぼんやりと、そんなことを思い出していた。記憶の基底に降り立つささやかな旅。バスの時刻は気にしながら、なんだけど。

 半世紀ほど前、昭和40年前後のこと。ボクは金沢に来ていた。叔母の披露宴に出た。木造の大きな建物のなかに宴席があって、大きな窓からは、卯辰山が見える。退屈しきって、廊下を走っていた。今にして思うと、金城樓じゃないかと思う。5月のはじめ、緑が萌え始める頃。

 断片的にそんなことが浮かんできた。そして、今はなくなった卯辰山のヘルスセンターに連れて行かれたこと。ボクは小さなときから、あんな猥雑で煩い場所は嫌いで、つまらなかった。そんなことも。