K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Irene Schweizer, Han Bennink: Welcome Back (2015) 引き続きデュオ・アルバム、再び録音のことも

 気がつくと、エリントンから引き続きデュオ・アルバム。好きなのだ。

 テイラー、ヘイデンのデュオアルバムのピアノの録音(演奏では全くない)に少しイラッときていたら、FacebookのJazz Tokyoのページ経由で、録音技師・及川公生さんの連載記事「聴きどころチェック」が目に入った。良さそうな録音、じゃないか。レコード会社のサイトまで行くと、完全に試聴でき、その録音の良さがPCのスピーカからも感じる。CDそのものは、まだあまり日本に入荷していない(?)ようで、残念、と思ったが、レコード会社のサイトから極めて安価($9.7)にダウンロードできると知って、さっそく入手。CDの通販では18EUR+送料だったので、抜群のCPじゃないか!

 という訳で昨夜入手。期待通りの音を楽しむことができた。適度な音場の広がり、及川さんの云うところの高音部の輝き。奏者のタッチでもあるのだろうが、鋭角的ではなく、むしろ曲線的な柔らかさが、輝く高音にうまく調合されている。完全に好み。ベニンクも珍しくバス・ドラムまで叩いているが、これも及川さんの記事にあるように抑制的。とてもバランスがよく、二人の会話、が眼前に広がる。楽器の音の表情が時々刻々変わっていき、その音色が遷移していく流れ、そのものが気持ちよい。所謂フリー・ジャズの領域の音楽であるが、破壊というより脱構築(古い表現!)という立ち位置のベニンク一派的な、音のコラージュがきらきら輝いている。それも案外、抑制的に。このIntactってスイスのレーベルが大いに気になった。調べると既に2枚持っていて3枚目。高瀬アキとベニンクのデュオ、高瀬アキのSo long Eric。どれも素晴らしい。さらにみるとモンク曲集とか、気になるアルバムがザクザク。困ったなあ。

 ベニンクとピアノのデュオは大好物で、高瀬アキの鋭角的な音も良かったが、Irene Schweizerの曲線的な音もくすぐられるようで気持ちよい。録音の良さ、と演奏の良さがお互いを高め合っていて、音を聴く楽しみを存分に与えてくれている。二人のスイス・ツアーのあと、スタジオに飛び込んでの録音。隙のない対話、がまさにそんな素晴らしい瞬間を捉えている。

 ボクはECMの音、も勿論すきなのだけど、少し匂いが強くて、控えて欲しいなあ、と思うこともままある。芳香も強すぎると、ってことである。その意味で、まったく録音技師の加味、を感じさせず、でも奏者の音が直接伝わってくるような「嬉しい誤解」を与えるような音造りって凄いことじゃないか、と思う。CDの能力がこのような音を包み込めるのであれば、新しい録音にはLPレコードは要らないなあ、とも思うのだけど、そうもならないのが残念なのだけど。

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Irène Schweizer, Han Bennink: Welcome Back (2015, Intakt)
1. Welcome Back (Schweizer – Bennink) 6:02
2. Kit 4 (Han Bennink) 3:04
3. Trap 5 (Han Bennink) 3:56
4. Free for All (Irène Schweizer) 4:43
5. Meet Me Tonight in Dreamland (Friedman – Whitson) 2:14
6. Verflixt (Irène Schweizer) 2:42
7. Rag (Irène Schweizer) 2:52
8. Bleu Foncé (Irène Schweizer) 3:42
9. Apus Melba (Han Bennink) 4:41
10. Ntyilo, Ntyilo (Johnny Dyani) 3:25
11. Firewood (Irène Schweizer) 3:05
12. To Misha with Love (Schweizer – Bennink) 3:21
13. I Surrender, Dear (Harry Barries) 2:16
14. Eronel (Thelonious Monk) 1:54
Irène Schweizer(p), Han Bennink(ds)
Recorded April 13, 14, 2015, at Hard Studios Winterthur, Switzerland
Mixed and mastered at Studio 1, Radio Studio Zürich.
Engineer: Martin Pearson
Produced and published by Intakt Records, Patrik Landolt.