K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Fred Hersch: Horizons (1984) LPレコードを入手した

 ハーシュのリーダ作はこのアルバムから。1984年だから、LPレコードの時代。先日からハーシュが気になりだした。

 ハーシュのレコードを気にする人は少なそうなので、難なく入手。価格もとても安い。入手して驚いたのは未開封。シールドを切るところからはじめた。

 レーベルはコンコード。当時のコンコードは主流のジャズというよりは、古めのスタイルで、楽しいジャズという感じで、完全に射程外だった。スコット・ハミルトンとかLA4とかね。今だと、すっと聴けてしまうけど。カタログを見るとジム・ホールもあるのだけど。

 さて内容だけど、本当に素晴らしい音。第2作(このあいだの投稿)が抑制的で、故にアイデアの切れ目のような気になる間があったのだけど、勢いに溢れる本作では、そんな感じはあまりなかった。そして高音でブロウするような瞬間の美音、が素晴らしい。マーク。ジョンソンのベースが時折、電気ベースのような感じなのが気になるが。バロンは次作と異なり押し続けるが、とても良い。強くドライヴする美音、良いアルバムだ。

 録音そのものは良い、とは思わない。ECMと比較すると楽器の定位感が曖昧で、真ん中に折り重なり、奥行きを感じない。ただ、ピアノが一層の美音で楽しめる、そこに尽きるのだ。

 

 

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[2011年1月26日 記事] 今宵はHerschを少し学んでみた

Fred Hersch: Horizons (1984, Concord)
1. My Heart Stood Still
2. Moon And Sand
3. The Star Crossed Lovers
4. One Finger Snap
5. Surrey With The Fringe On Top
6. Miyako
7. Cloudless Sky
Fred Hersch(p), Marc Johnson(b), Joey Baron(ds)
CD Universeで試聴できます。
http://www.cduniverse.com/search/xx/music/pid/1006494/a/Horizons.htm

クラシック一色のようにみえた昨年後半なのだけど、Stefano BollaniとこのFred Herschに気持ちが入ったことがジャズでのトピック。ブログをはじめたことが大きい。今までは、雑誌も読まないで、店で気になったモノ(試聴とかポップ)しか買っていないので、出会わなければ出会わないのだ。だから趣味がちかいブロガーの方々の話はとても参考になるのだ。ありがたい。

このFred HerschのHorizonsはブロガーの方に教えていただいた一枚。amazonに注文したのだけど入手まで難航し、先日届いた物。結論から云うと、「ジャズを聴いていてよかった!」的なとても好きなアルバム。

面白いのは、一曲目から淡々と進んでいく中でゆっくりと気持ちに入り込んでいく感じ。微温の大気のようにゆっくりとボクにまとわりつき、気がついたら包まれているような感じで、何曲めだろうか、すっかり魅了されていた。まったくケレン味がないのである。葛根湯とか、漢方薬を呑んだときの体の反応みたい。

Bill Evans Trioの最後のベーシストMarc Johnson(その後のBass desiresは大好き)やBill Frisellでボクのおなじみになった Joey Baronのドラム。とてもジャズ的に堅牢なバックを従えた、しっかりとしたピアノトリオ。後年、さらに輝きを増すピアニズムが音の端々にあって、音の粒度や艶がとても良い。ボク的にはOne Finger Snapで刮目した。大好きなHerbie Hancockの曲が、彼並のグルーヴ感で、それも白い感じで、Bill Evans的なピアニズムをはらんで、飛び出したのだから。すごい。Surrey With The Fringe On TopはBlossomの唄声で好きな曲だし。気持ちいい。

まだしっかりとジャズを聴いていた1984年のアルバムだけど何で気がつかなかったのかなあ。当時、ConcordというとScott Hamiltonとか少し懐古的なイメージが強くて、あまり手を出していなかったレーベルであることも関係しているかもしれない。また話題のバンドとかでの楽歴もあまり無いのでは。

そんな訳でFred Herschのことは余り知らなかったので、今宵はwikiで勉強:

Fred Hersch (born October 21, 1955 in Cincinnati, Ohio) is a contemporary American jazz pianist who has become a consistent and highly demanded performer on the international jazz scene.
なんとなくアメリカ中部の光景、映画のシーンのようなものが気持ちにうかんだ。Pat Methenyと年齢も近いし、出身地も近い。彼らの共通する原風景が近い音世界をつくっているのかな。どうでしょうか。

楽歴的にはStan Getz, Joe Henderson, Lee Konitz, Art Farmer, and Charlie Hadenとの共演歴があるとのこと。気になるので、Discography(http://www.fredhersch.com/discography.html)を調べてみた。 Lee Konitz, Art Farmer, and Charlie Hadenはあるみたい。ConcordやSoul noteが多いのだけど、初リーダ作と時期が被っていますね、多分。Stan GetzのDiscographyには出ていなかったので、初リーダ作の30才くらいまで、あまり陽があたらなかったのかな?

In 1986 he was diagnosed with HIV. Since then, Hersch has campaigned and performed for several AIDS-related charities and causes. Along with Gary Burton and Andy Bey, Hersch is one of the few openly gay jazz musicians. ゲイを公言し、HIV感染。現在はAIDS発病で時として生命の危機にある状況と聴く。そんな状況故か近年のアルバム、最近聴きはじめた、の陰翳はとても強く、儚い命の行くすえを表しているようだ。

後年の更に内省的な演奏にも惹かれるのだけど、この初リーダ作のとてもいい。もう少し、いや沢山聴いてみたい、と思う今宵なのだ。