K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

渡辺貞夫:Live in Nemuro 1977 (1977) ネムロ買い、の一枚

 昨日の菊地雅章の記事で紹介した渡辺貞夫の公式サイトを見ると、当たり前ではあるが、最新作としてcreditされている。

 1970年代後半からは外国人とのアルバム中心となる。翌年のリサイタルでのアルバムから、日本人とのセッションが記録されたアルバムは途切れる。ボクがリアルに知っているのは、この時期。カルフォルニアシャワーの大ヒットの頃である。

 その後、日本人とのアルバムは1枚/10年くらい。日本人とのライヴアルバムは2007年の一関・ベイシーでのライヴまで途切れる。その意味でもレギュラーバンドでのライヴは、クロニカル的な価値も高いなあ、と思った。

 とにかく聴いて欲しいと思う。1980年頃、各地で開催されたジャズ・フェスティバルで聴くことができた日本のジャズの空気が詰まっている。渡辺貞夫の長い楽歴での共演者達が出した音の源が彼のバンドである、ということを、このアルバムを聴いて思った。

 apple musicでも聴くことができる:

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 渡辺貞夫のアルバムを新品で買うなんて、何年ぶりだろうか?以下の記事を読んで、すぐamazonに発注。

 

outwardbound.hatenablog.com

 この記事の冒頭にも書いてあるが、1970年代の根室のライヴといえば、日野皓正の車石、日野元彦の流氷。熱心な地元のファンの尽力で、素晴らしいライヴが記録に残っている。だから、ナベサダ買い、ではなくて、ネムロ買い、の一枚。それにしても何故今頃、このアルバムは飛び出したのであろうか。ジャケット見てもただならただならぬ気合いのなさ。これを出したい、という気迫を全く感じるものでなく、ふっと出た感じ。

 1970年代の渡辺貞夫は、これもまた前掲のブログが触れているモントルーのライブとか、ヴィトウスとかコリアとのアルバムで、なかなか鋭い演奏をしている。ボクが聴きはじめた1970年代の終わりに、草刈正雄と男性化粧品のコマーシャルに出演して、ニコニコしていた丸い印象と随分と違うのだ。

 このアルバムは、そんな大人気を勝ち得たフュージョン時代直前の一枚。全体的には主流派っぽい流れながらも、様々なリズムを入れていて熱い。聴いていて良かったのは 本田竹廣のキーボード。2曲目。グルーヴする感じが、後年のネイティブ・サンそのもので懐かしい。

 全般的にちょっと古くなってきたかな、という感もあるのだけど、それ以上に根室の聴き手の熱さに奏者が巻き込まれているライヴそのものを聴くことに価値があるのだと思う。

 当時のSJ誌で主催の「ネムロ・ホット・ジャズ・クラブ」はよく登場していた記憶があって、ちょっと有名であったと思う。そのクラブがまだ存在していて、半世紀の歴史を刻んでいるのには驚いた。そのサイトが面白くて、いやネベサダのライヴよりも面白い、正直云って。会長が気分だけ成金の「ジャズ漁師」、だそうだ。最高だね。この熱気の尻尾、をみたような気がした。

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渡辺貞夫:Live in Nemuro 1977 (1977, JVC)
1. MASSAI TALK
2. HUNTING WORLD
3. CHELSEA BRIDGE
4. ON GREEN DOLPHIN STREET
5. BOSSA NA PRAIA
6. RHYTHMANING
7. MY DEAR LIFE
渡辺貞夫(as, sopranino, perc), 福村博 (tb), 本田竹広 (p), 岡田勉 (b), 守新治 (ds)
1977年10月8日 根室市公民館