K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Cecil Taylor: Jazz Advance(1956) セシル・テイラーという大きな鍋に

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 初期テイラー詣でを続けている。エリントンからモンクのピアノがいいなあ、と思うなら、ここを聴くべきだ、と気がついたからだ。
入手したのはキング盤。結構音がいい。原盤はさらに、と思わせる一歩手前感が憎い。一回だけみかけたかなあ、幻で有名だったTransitionだからなあ。

そもそもモンク1曲、エリントン1曲を含む本盤は、狙い通りの1枚。ピアノの技巧が実に素晴らしい奏者だと、改めて思う。音が粒立っていて、一音一音がしっかりした意思で打ち込まれている。旋律を奏でるとき、無調になるとき、グルーヴするとき、それぞれ明瞭な音が流れ出る。だから流麗な印象よりも、強靱な印象を絶え間なく与える。だから既にピアニストとしてのテイラーは完成していた、と思う。

後年と違うのは、現代音楽的な音と伝統的なジャズの音が融合過程にあるという印象。だから20世紀前半のロシアやフランスの楽曲を思わせる瞬間があったり、ピカイチのモンクの後継者と思わせる瞬間があったり、作曲家として完成する前の印象。

そうセシル・テイラーという大きな鍋に、20世紀の様々な音の材料を入れ、火を入れた瞬間の記録のようだ。だから面白い。

ジャズ・アドヴァンス

ジャズ・アドヴァンス

 

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Cecil Taylor: Jazz Advance(1956, Transition)
A1. Bemsha Swing (Monk) 7:26
A2. Charge 'Em Blues (Taylor) 11:15
A3. Azure (Ellington) 7:35
B1. Song (Taylor) 5:19
B2. You'd Be So Nice To Come Home To(Porter) 9:15
B3 Rickkickshaw (Taylor) 6:05
Cecil Taylor(p), Steve Lacey(ss), Buell Neidlinger(b), Dennis Charles(ds)
Producer – Dave Coleman, Tom Wilson
Recorded in Boston in September 1956.