K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

高橋悠治: John Cage/Sonatas And Interludes For Prepared Piano (1975) 現代音楽の時間・ジャズの時間

高橋悠治: John Cage/Sonatas And Interludes For Prepared Piano (1975, Denon)
A1. Sonata I 2:24
A2. Sonata II 2:01
A3. Sonata III 2:22
A4. Sonata IV 2:16
A5. First Interlude 3:43
A6. Sonata V 1:29
A7. Sonata VI 2:09
A8. Sonata VII 2:08
A9. Sonata VIII 2:53
A10. Second Interlude 3:46
A11. Third Interlude 3:12
B1. Sonata IX 4:01
B2. Sonata X 3:17
B3. Sonata XI 3:46
B4. Sonata XII 3:07
B5. Fourth Interlude 2:51
B6. Sonata XIII 3:42
B7. Sonata XIV And XV "Gemini" 6:20
B8. Sonata XVI 5:00
高橋悠治(p)
Engineer: Masao Hayashi
Producer: Yoshiharu Kawaguchi
Recording: Nippon Columbia Studio No.1, Tokyo December 1975.
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針を降ろすと、音と同時にゴワゴワとした背景音が大きい。音が雑音で浮き上がっている。そんな風に盤が死んでいたので(盤面は綺麗だけど)、ゴシゴシと溝に沿って拭き取りを行うと、極く薄い茶色い汚れが拭き布に付着する。指先の溝の感触が楽しい。

改めてターン・テーブルに置き、針を降ろすと、音の鮮度が蘇ってくる。DenonのPCM録音は美しいのだけど、音の粘り、のようなものが弱い印象はある。しかし本盤のような現代音楽のピアノの音にはうまく合う。

prepared pianoの打音が様々な音を流す。ピアノ、ではなく打楽器だ。その色彩豊かな打音が本当に適当な空間を伴って漂う。実に美しく収録されている。硬質な印象がある高橋悠治と曲の相性もよく、弱音を含め、鉱物を共鳴させた音が美しい。西洋的な音空間から、もっと始原的な世界へ打楽器の律動が連れて行ったりで、愉しい。

同じ時期に富樫雅彦がDenonに収録している一連の作品と通底する部分、多彩な打音が構築する移ろう音空間、と同時にジャズ奏者が作る音との違いは何か、そんなことを感じようとしていたと思う。クラシック・現代音楽では、演奏で累算された音が過去から未来への時間の絶対軸を追い求めている、ような。ジャズの奏者は瞬間・瞬間で精算・消去され、その瞬時の差分に意味を与える、ような。

そんな、どうでもよい心象を呼び起こす時間だった。

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