K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

ラ・フォル・ジュルネ金沢2013:今年は少しだけ


 どうもフランス語のタイトルは苦手。頭に上手くはいらない。それはともかく、昨年はロシア特集で、たまたまショスタコーヴィッチの前奏曲とフーガの全曲コンサートを聴いて盛り上がった後だったので随分と聴いた。出色だと思ったのはジャン=クロード・ペヌティエ( Jean-Claude Pennetier、このヒトの名前も頭に入らない、トホホ)のスクリャービン集。邦楽ホールが魔術的な音色に浸ったのが忘れ難い。

 今年はLPレコードにノック・アウト状態なので、どうも関心がいかなかった。フランス語のタイトルもイケナし。それでも折角なので、直前に幾つか選んで聴くことにした。既に幾つかの講演は売り切れていたのだけど。

 ピアノ曲を聴いたのだけど、個々の演奏はともかく気になったのは会場の騒音。子供の呻き、咳、紙の軋み音、ピアニシモのタイミングで随分邪魔された感覚がある。特にアートホールでは気になって仕方がなかった。普段、そんなことを思うことはないのだけど。なんでだろう。

1.公演番号:123(2013年5月3日、石川県立音楽堂 邦楽ホール)
ジャン=クロード・ペヌティエ (ピアノ), レジス・パスキエ (ヴァイオリン), ロラン・ピドゥ (チェロ)
   (1) ドビュッシーピアノ三重奏曲ト長調
   (2) ラヴェルピアノ三重奏曲イ短調

昨年のスクリャービンが印象的だったので。本当はフォーレ前奏曲を聴きたかったが売切れ。昨年同様、ペヌティエの弱音の美しさを楽しんだ。本当に息を呑むような瞬間が何度もある。ドビュッシーの曲の印象は薄いのだけど、ラヴェルの曲の民族音楽的な印象が面白かった。CDで聴くとそんな記憶も残っていなかったのだけど。生々しく弦の弾ける音がそんな印象を喚起したのか。とても気持ち良かった。

2.公演番号:134(2013年5月3日、金沢市アートホール)
ルイス・フェルナンド・ペレスLuis Fernando Pérez (ピアノ)
   (1) ソレル:ソナタ第87番ト短調
   (2) ソレル:ソナタ第84番ニ長調
   (3) グラナドス:詩的ワルツ
   (4) グラナドス:嘆き、又はマハと夜泣きうぐいす(組曲ゴイェスカス」より)
   (5) グラナドス:愛と死(組曲ゴイェスカス」より)
   (6) アルベニス:エル・アルバイシン組曲「イベリア」より)

どうもスペインの曲は印象に残らない。沢山は聴いていないが、グラナドスアルベニスでは今のところ印象薄い。モンポウは好きだけど。エキゾティズムを期待する程感じないからか。今回もその印象を払拭するには至らなかった。残念。このピアニストのテクニックは素晴らしいと思ったが、音色がそんなに美しいとは思わなかった。エマールに師事?って感じ。ただピアノ目前の席だったので、そのためかもしれないが。アンコールの曲は分からなかったが、それは随分と楽しめたので、決して悪い演奏じゃなかったと思うけど。曲に関心が行かなかった、ということ。

3. 公演番号:234(2013年5月4日、金沢市アートホール)
広瀬悦子 (ピアノ)
   (1) ドビュッシー:沈める寺(前奏曲第一週より)
   (2) ドビュッシー:西風の見たもの(前奏曲第一週より)
   (3) ラヴェル:悲しい鳥たち(鏡から)
   (4) ラヴェル:海原の小舟(鏡から)
   (5) ラヴェル:夜のガスパール

ラヴェルの曲を生で聴いたことがないから、という選択。奏者は「パリで研鑽を積んだ現代のヴィルトオーゾ」とのこと。ドビュッシーの曲からはじまったのだけど、難しそうなパッセージが現代曲に聴こえて、なんとなくなあ、というスタート。おいおい、最前列の席の幼児が嫌がってる(子供向きの曲じゃないよね)、と気が散ってしまい、あれまあ。ラヴェルの曲がはじまった瞬間、音の艶のようなものが変わって、粒立っている。煌めくような音が連なっている。夜のガスパールもマジカルな魅力が溢れる素晴らしい演奏だった。奏者の技巧と曲調の整合性がいいのか、ドビュッシーの曲で感じたような違和感は感じなかった。弱音の音も美しく、フル・レンジでピアノの魅力を堪能。可哀想な幼児は、早々に保護者が抱いてホール外に退去してくれたのも、有り難かったのだけどね。

沢山は聴かなかったのだけど、よき音をたっぷり聴いた感触が残った。奏者はもとより、主催者・ヴォランティアの皆様、ありがとうございました。永く続くと嬉しいイヴェントですね(ジャズ・ファンとしては、遠い目でLive under the skyを思い出す)。