K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

富樫雅彦、高木元輝:アイソレーション(1969) 「残念」だったのは

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 何とかレコードを入手した。富樫雅彦の四股が自在なときのアルバムを、しかるべき音圧で聴きたかった、のだ。

 実は後年の演奏との違いはあまり感じなかった。勿論、バスドラムが鳴ったり、自由な四股から発せられる音は後年と同じじゃない。しかし、これを聴いて感じるのは、伝統的なビートから逸脱したときの、フリーフォームでの演奏は、一貫した音世界のなかで作られていて、脚の自由を失った後は、その音像を手で作りだしている、ということ。

 そんな意味で「残念」だったのは、違う富樫を感じたかった、からなのだけど、彼の凄みをそんな形で知ってしまったのだ。考え抜かれて、音が作られているのだ。

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[2016-04-29]東洋の身体
映画、というより、ヴィデオ・クリップであった映画のあと、金沢に向かう列車の中で、アルバムであるアイソレーションを聴いている。映画のサウンド・トラックでは、音量は抑え気味であり、それが音の温度の低さ、を演出している。より明瞭で、しっかりとした音圧で聴くと、彼らなりの熱さ、もなくはない。それ以上に、細部まで音を制御する富樫の偏執的な凄みをますます感じる。
森山威男と比べると、彼のドラムが東洋の身体から発する揺らぎ、のようなものに満ちているように感じられる。森山さんのドラムは正確に刻まれ、叩き込むスティックの微係数が昂奮を呼ぶ。とてもロジカルであり、メカニカルな快感。富樫さんドラムは思索のようなものが通奏低音のように流れ、時間とともに積分されていくような印象がある。その時間をかけた、ゆったりとした揺らぎのようなものが、東洋的な音の印象をつくる。
1969年にこのような音に辿り着いた彼ら、に驚くばかりである。

 

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富樫雅彦, 高木元輝 (1969)
1. Isolation I 16:45
2. Isolation II 19:08
富樫雅彦(ds, vib, marimba, perc, timpani), 高木元輝(ts, b-cl)

 

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