K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

大西順子: Tea times (2016) 日本語の歌詞(考)じゃないけど

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 最近、toshiya氏の怒りの記事で、新しいアルバムと「引退」からの復活を知った。

8,9曲目のラップがイカんそうだ。という訳で、何だか楽しみになって聴いてみた。

 実はボク自身、彼女がデビューした頃は仕事が忙しく、熱心にジャズを聴いていなかった時期。だから存在そのものに何ら思い入れはない。ここ数年で、何枚かアルバムを入手したのだが、殆ど聴いていない。印象が薄い。このブログで大西順子の記載は僅か2箇所。アルバム自体は取り上げていない。前回の「復活」からの2枚も聴いたが、記事は書かなかった:

 多分、ボクのなかではジュリ・アレンと同じ引き出しに入っている。世評は高いし、確かに上手い。だけど、ボクのなかに届かないのだ。一つにはデビューのときの期待のようなものを共有していない、ある種のコンテクストを音のウラに貼っていない、からかもしれない。

 実は過去聴いたアルバムのなかで、一番印象的。曲ごとに音の風景が変わるし飽きない。雅章でないキクチさんプロデュースということで、これまたtoshiya氏の怒りのマトになっているが、彼のアルバムほどのフェイク臭はない。

 今までのアルバムでは、確かに流麗な音が速く流れるのだけど、流れてお仕舞い、のような印象があった。このアルバムは所謂「現代ジャズ」らしく丁寧に作り込まれている分、聴かせてくれる。ピアノもスピード一辺倒でなく、ゆっくりと空間を組み立てるような感じが気持ち良い。

 挾間美帆のホーンアレンジはエネルギーに溢れ、強力。もう少し軽くてもいいのかなあ、とも思えたけど。(先日の、題名のない音楽会も同じ印象)

 さて、問題のラップだけど、ボクもダメだなあ、と思う。日本語の歌詞が泳いでしまっている、ように思う。

 特にジャズやソウルがそうだけど、優れた歌唱では歌詞そのもののメッセージ性が煩くない。演奏や歌唱の音としての力の強さで、歌詞のメッセージ性が無力化されるからだと思う。上手い演歌歌手の艶っぽい唄が案外聴いていてイヤにならないのは、そんな理由だと思う。 あのラップはそんな力がなく、言葉のメッセージ性が漂流しているような感じが気持ちわるい。ラップの問題、ではないと思う。ジャズにハメ込む日本語の処理がヘタなだけじゃないのか?日本語じゃない部分がちゃんと収まっているのだから。
 だいたいジャズを聴いている中高年の相応数が、昔の歌謡曲・フォーク・ニューミュージックの下手くそな唄の過剰なメッセージ性が嫌いでジャズに流れたのではないか。だから、そんなモノの残滓のようなものがきこえると、無条件に気持ち悪いのだ。toshiya氏に限らず、ボクなんかでも。

 

apple music:

 

関連記事:

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大西順子: Tea times (2016, Sony)
1. Tea Time 2
2. Blackberry
3. Tea Time 1
4. Chromatic Universe
5. GL/JM
6. The Intersection
7. Caroline Champtier
8. Malcolm Vibraphone X
9. U Know
10. Fetish
大西順子(p), Yunior Terry(b), Terreon Gully(ds),
N/K from JAZZ DOMMUNISTERS(Rap on 08), OMSB from SHIMI LAB(Rap on 8, 9), JUMA from SHIMI LAB(Rap on 9), 吉田沙良(Chorus on 9), 矢幅歩(Chorus on 9)
on 5, 6 挾間美帆(Horn section arrange), 土井徳浩(as, cl) , 近藤和彦(as), 庵原良司(ts, fl) , 竹野昌邦(ts), 鈴木圭(bs), 中川英二郎, 半田信英,笹栗良太(tb), 野々下興一(btb), エリック宮城, 西村浩二, 菅坡雅彦, 小澤篤士(tp), 宮嶋 洋輔(g)
on 4: 庵原良司(ts, fl) , 土井徳浩(as), 中川英二郎, 半田信英(tb), エリック宮城, 西村浩二, 菅坡雅彦(tp)