K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

(ECM2526) David Virelles: Gnosis (2016) 21世紀のジャズのなかに感じること

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近所のyuccaさんのtweetで少し気になった。

 David Virellesは、一年近く前、おかしな10インチ盤をECMから出していたのだけど、何故か聴いていなくてDead stock状態. 軽く聴いてみると、実に格好いいではないか!
実はこのGnosis、既にレコードはECMに注文し、到着後にはMP3のDLが可能なのだけど、我慢できなくて、bandcampのDavid VirellesのサイトでCD音質のものを購入した。

いやあ、聴き続けているが想像 以上に面白い内容。

・NYの先鋭的な音とラテン音楽キューバ?)が現代音楽的に精緻に組み立てられ、そしてECMの音に仕上がっている。

・祝祭的なラテンの音が冷たく凝固しながらも、律動のエネルギーを失わずに、むしろ整然とした部品として音空間の中に組み上げられている。Tyshawn Sorey同様、現代音楽的な高い作曲能力が強い印象を与える。

・creditに見るように多くの奏者が参加しているが、ピアノに強い焦点が当たっていて、そこにボケはない。どのような色彩の音の中でも、ピアノの鋭利な音にぴたっと光が当たっている。ECMの録音技師のなかで情緒に流れない最も鋭い音を出すFaberが録音、ミックス。その1+1>2の効果が最大限出ている。ECMのあの残響過多、ではなく、輪郭が極めてくっきりした音。そのなかでの鋭いピアノ。聴いていて溜息。

・奥行きのある音空間のなかにモーガンらが配されていて、その味わいがニューヨークの先鋭的なシーンと通底している。Ruwehレコードから香り立つ匂い、と似ている。美味しい。

・このアルバムは静的なラテンの音空間なのだけど、動的なパンディロのアルバム(RuwehのSergio Krakowski)との対比を聴いてみたい、と思った。

 ・ニューヨークの音、ラテンの音、現代音楽的組み立て、ECM固有の音空間が矛盾なく成立している。それをアイヒャー御大がプロデュースしている、凄いことだと思った。ある種のマンネリを感じていたECMであるが、ここ2年くらいのアルバムには素晴らしいものが多すぎる、と思った。欧州から米国のシーンを切り取る、そのアイヒャーの「フュージョン」の素晴らしさを、1970年代のアルバム同様楽しめる、とは思ってもいなかった。 

・何に昂奮しているかというと、クラウド的に分散し、遠心力のなかに独創性を感じることが多い21世紀のジャズのなかに、微かに彼らの「ジャズ」に対する求心力のようなものを感じる頻度が増えていること。そう、ジャズが好きなんだよ、きっと、という感じ。

 

GNOSIS [2LP] [12 inch Analog]

GNOSIS [2LP] [12 inch Analog]

 
Gnosis

Gnosis

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(ECM2526) David Virelles: Gnosis (2016)
Released: 15 Sep 2017
1. Del Tabaco Y El Azúcar(David Virelles) 4:01
2. Fitití Ñongo(David Virelles) 2:24
3. Lengua I(David Virelles) 3:27
4. Erume Kondó(David Virelles) 2:03
5. Benkomo(David Virelles) 5:25
6. Tierra(David Virelles) 6:16
7. De Ida Y Vuelta I(David Virelles) 3:42
8. Lengua II(David Virelles) 1:35
9. De Ida Y Vuelta II(David Virelles) 2:32
10. Nuná(David Virelles) 2:40
11. Epílogo(David Virelles) 1:55
12. Dos((David Virelles, arranged by Henry Threadgill) 4:04
13. Caracola(David Virelles) 1:28
14. Visiones Sonoras(David Virelles) 1:19
15. De Portal(David Virelles) 2:35
16. De Tres(David Virelles) 0:41
17. De Cuando Era Chiquita(David Virelles) 2:50
18. De Coral(David Virelles) 3:16
David Virelles(p, background vocal, marimbula), Thomas Morgan(b), Alex Lipowski(ds, perc), Nosotros Ensemble(ensemble), Rane Moore(cl), Allison Loggins-Hull(fl), Román Díaz(vo, perc), Mauricio Herrera, Melvis Santa (background vocal), Matthew Gold (Marimba, Glockenspiel), Adam Cruz, Mauricio Herrera(perc), Yunior Lopez(viola), Christine Chen, Samuel DeCaprio(violoncello)
Design : Sascha Kleis
Engineer [Recording] : James A. Farber
Engineer [Recording] [Assistant] : Nate Odden
Mixed by Virelles, Farber, Eicher
Producer: Manfred Eicher
Recorded May 2016, Avatar Studios, New York
Mixed December 2016