K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

George Cables: Why Not (1975) そこから薫り立つ匂い

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当時、ケイブルスは最晩年のアート・ペッパーと演奏していて、来日もよくしていたと思う。巧くホーンを引き立てる名脇役、の印象がある。ペッパーの遺作はケイブルスとのデュオだし。燻し銀なんて紋切りのコトバは使いたくないが、まさにそう。ペッパーがケイブルスの前に共演していたピアノがスタンリー・カウエルなので、甘いペッパーのアルトに辛口のピアノ、と考えたのかもしれないが、ケイブルスはそんなに辛くない。体制内保守のイメージ、なのだ。

このアルバムはペッパーと共演する前にLAで吹き込まれたもの。ライナーを読むと、ブレイキー、ロリンズ、ヘンダーソン、ハバードと共演、そうBN1500-4000の世界の嫡男。確かに体制内保守。一方、Stra-eastでハーパーとも共演している。まあStrata-eastもBN4000の世界を1970年代に拡大・発展したような感じだし:

このアルバムは初リーダ作とは思えないほどいい。ちょっと足りない感じ、もまたいい。タッチはそんなに強くない。ピアノもそんなに響かないし、キレイな音ではない。しかし、それを軽く速度で誤魔化す、それが全くなく、丁寧に音を積み上げていく。そんな中での疾走感、が小気味良い。

2000年頃にケンブリッジのクラブでソニー・フォーチュンのバンドで出演しているケイブルスを聴いた。弱々しい印象であった。このアルバムの印象も、強いピアニストではない。しかし、そこから薫り立つ匂い、のようなものが、この時代の素晴らしいピアノ奏者達固有のものであって、何よりもそこにボクは惹かれるのだ。佳品、の名に相応しい。こんな素晴らしいアルバム、レーベルを残したプロデューサーの悠雅彦さん、トリオレコードに敬意を表したい。クロスオーヴァーフュージョン)が席巻した1970年代と云われるが、商業面の話なのだ。

追記:

共演のトニー・デュマスとかカール・バーネットも懐かしい。当時、代替わりした最終期のコンテンポラリーなんかで、ファレルとかハバードのアルバムで出ていたのを思い出した。彼らも渋い脇。どうしているのかな。

Why Not

Why Not

 

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George Cables: Why Not (1975, Whynot)
A1. Ebony Moonbeams 10:31
A2. Rita I & II - Her Spirit/Her Soul 11:53
B1. Dark Side - Light Side (Yuh's Blues) 8:59
B2. Quiet Fire 9:47
B3. Why Not ? 7:29
George Cables(p), Tony Dumas(b), Carl Burnett(ds)
Producer: Masahiko Yuh
Recorded by, Mixed by Mike Stone
Recorded October 7, 1975 at Record Plant, Los Angeles

www.discogs.com