K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

アナトーリ・ヴェデルニコフの至芸(DVD) 帳の向こうから姿が現れた

あまりDVDは観ない。音で十分なのだ。しかし、このヴェデルニコフのDVDには心を捉える何か、がある。

極端に映像がなく、メロディアのレコード盤やDENONのCDから見えてくる姿は、かなり陰影の強い印象。ソ連で活動の制約が大きく、そんな話もベールの向こう側で霞むような印象を与えている。経歴もそうだ。旧満洲の白系露人であり、東京に短期留学しピアノを教わった、ということだ。スターリン期に教育(ピアノ)のため帰国したが、父親は粛清された、ということだ。

映像で「動く姿」、「生きた存在」として初めてみて、そんな音に纏わりつくコンテクストが少し飛んで、ただピアノの美音に意識が置くことができたように思う。

DVDが届いて、後半がタチアナ・クラソワ との連弾で残念だと思ったが、これも実に美しいピアノの音響で楽しめた。

まあ結局、映像から離れて音を聴き続けているが、あまり観ないDVDの購入は迷ったが、観て良かった。帳の向こうから姿が現れた、のだ。