K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

(ECM1054) Richard Beirach: Eon (1974)生真面目な「ジャズの伝道者」とECMのマッチング

  バイラークとECMについては、ECMに関する邦著で語られた件で、ある種の意識がついてまわる。が、そこはともかく聴いてみる。

 バイラークは決して嫌いなピアノ奏者じゃない、むしろ「とても好きなタイプ」の筈。しかし、ターンテーブルに彼のレコードを置くことは、気がつくととても少ない。何故だろうか。 

 このアルバムを聴いていると、何か味が足りないように感じる。何だろうか。ピアノの響きも美しいのだけど。

 一曲目のナルディスを聴いていて思ったことは、編曲というか曲の印象が60年代のジャズピアノの延長線上にあって、その意味での予定調和が強いこと。「悪い意味で」安心して聴ける、ということ。彼のピアノの魅力を損なっているように感じる。ベースのフランク・トゥサ、ドラムのジェフ・ウィリアムスも伝統的なジャズの枠の中にきっちり入って、きっちりやっている。ECMに求めている「ジャズの室内楽」的な音の在り方、米国と欧州がcross overしたような音世界えはない。

 だから、A面2曲目のソロはとても良いなあ、と思ったのに、アルバム全体の印象としては残念感がある。ジャズ・アルバムとしては良いのだけど。ECMじゃなくて、Enjaだったら違和感は全くないなあ。リーブマンやバイラークのような生真面目な「ジャズの伝道者」とECMのマッチングは、今ひとつなんだなあ、と思った。「スーパーB級」のキューンのような器用さ、がないように思える。

 このアルバムは1974年11月にニューヨークで録音され、ドイツ(多分)でremixされたもの。概ね、ECM的な空気は保っている。が、残響感などのイコライズのためか、ベースの音の誇張感、ピアノの音の濁りが気になって仕方がなかった。古いレコード盤の場合、何回か針でトレースするうちに、不思議なほど濁りが抜けることがある。このレコードもそうだったのだけど、濁りが残った。過度のイコライズの影響じゃないかなあ、と思うのだ。

 メロディア盤の美音を聴きすぎた影響が、こんなトコロに出てきた。困ったものだ。

youtu.be

参考記事:

jazz.txt-nifty.com

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[ECM1054] Richard Beirach: Eon (1974)
A1. Nardis (Miles Davis) 11:56
A2. Places (Dave Liebman) 4:03
A3. Seeing You (Frank Tusa, Richard Beirach) 4:05
B1. Eon (Richard Beirach) 8:13
B2. Bones (Richard Beirach) 3:34
B3. Mitsuku (Richard Beirach) 6:16
Richard Beirach(p), Frank Tusa(b), Jeff Williams(ds)
Layout: B & B Wojirsch
Photograph: Shelley Rusten
Design [Cover Design]: Eugene Gregan
Recording Engineer: Tony May
Mixinng Engineer: 
Producer: Manfred Eicher
Recorded November 1974 at Generation Sound Studios, New York City