K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Brigitte Fontaine: Comme à la radio (1969) 声の力

Brigitte Fontaine: Comme à la radio (1969, Saravah)
A1. Comme à la radio
A2. Tanka II
A3. Le Brouillard
A4. J'ai 26 ans
B1. L'été l'été
B2. Encore
B3. Léo
B4. Les petits chevaux
B5. Tanka I
B6. Lettre à Monsieur le Chef de gare de La Tour de Carol
Brigitte Fontaine(vo), Areski Belkacem(vo,perc), Jacques Higelin(g)
Art Ensemble of Chicago: Lester Bowie(tp), Leo Smith (tp), Roscoe Mitchell(fl), Joseph Jarman (oboe,sopranino), Marachi Favors (b)
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以前持っていたレコードは日本盤。気になって仏盤を入手。オリジナルではなく、1975年くらいのレーベルが変わった後の盤。見開きジャケット。

膜が一枚取れた感じかな、生々しい。面白いのはRIAAで聴くと、妙に低音の張り出しが気になる。欧州盤のFFRRやLONDONカーヴで収録されたレコードをRIAAで再生すると、低音が過剰になるのだ。

ということでフォノイコライザのLONDONカーヴで聴くと、実にバランスが良い。眼前にフォンティーヌの声とアレスキの打音が広がる。

改めて思うのは、このアルバムのアート・アンサンブル・シカゴ、ジョニ・ミッチェルのショーターやメセニー、シルヴィアンのベイリー、スティングのブランフォード・マルサリスなどなど、全て素材であり背景音。

声の力、は偉大だなと思う。

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ラジオのように

ラジオのように

 

[2013-06-29] 抽象的な土着性

 ふっと聴きたくなるときがある。もう40年以上前の吹き込みなのだけど、時間、のようなものが削げ落ちている。

 ジャズの世界では、前衛的なシャンソン歌手がフリージャズのアート・アンサンブル・オブ・シカゴと一緒にジャズともシャンソンともつかない不思議な音楽を作った、と紹介されている。ボクには、あまりジャズの影、のようなものは感じない。アート・アンサンブル・オブ・シカゴが、フランス人が頭で感じる「アフリカ」のオトを演っている。それも、サハラの北部に陣取るベルベル人の集落に思いを馳せるとき、砂漠の南から風に乗って微かにきこえる黒人の太鼓、辺境のイスラムの民からみた異教徒のオト。そんな二重にも、三重にも仕掛けられた複雑なエキゾティシズム、のようなオト。抽象的な土着性。

 だから午睡から覚めたときに思い出せない夢のような、薄く儚い思い出にもならないオトの残滓。聴いているときの時間の微係数だけが散乱していくような、不思議な快楽がそこに存在する。何処にも身の置き場がみつからないような焦燥感を愉しむような午後に浸っていたい。