[ECM1042] Eberhard Weber: The Colours Of Chloë (1973)
A1. More Colours (Eberhard Weber) 6:40
A2. The Colours Of Chloë (Eberhard Weber) 7:45
A3. An Evening With Vincent Van Ritz (Eberhard Weber) 5:46
B. No Motion Picture (Eberhard Weber) 19:56
Eberhard Weber (b, Cello, Ocarina), Rainer Brüninghaus (p, synth), Peter Giger (ds, perc), Ralf Hübner (ds on A2), Ack Van Rooyen (flh), Südfunk Symphony Orchestra Stuttgart (Strings [Cellos] )
Design [Cover Design] : Maja Weber
Layout: B & B Wojirsch
Photography: Kira Tolkmitt
Engineer: K. Rapp, M. Wieland
Producer: Manfred Eicher
Recorded December 1973 at Tonstudio Bauer, Ludwigsburg, Germany
https://www.ecmrecords.com/shop/143038750652/the-colours-of-chloe-eberhard-weber
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[2015-10-14] 本当にいいアルバムだなあ
渓流へ入る季節が終わった瞬間から、音聴きに集中できる。現金なものだ。我ながら呆れ、驚いている。
そんな訳で、長く中断していた「ECMのレコード盤連番聴き」が復活している。昨日アップしたガルバレクのアルバムの記事で、「欧州奏者としての独自の音を生み出しはじめた道標のような1枚」と記載した。このアルバムは、更に完成度の高い、独自性に溢れる欧州の音、ではないかと思う。全くの不勉強で、このアルバム以前のヴェーバーの楽歴は知らないのだけど、曲の構成能力に驚いた。と同時に、完成度が高いimprovisationによらないジャズ(的な音楽)を創りだしていることを再認識した。現代音楽的な音、ロック的な音、ジャズ的な音、それを欧州の感性で融合、ではなく緻密に再構築している印象。それでいて、音楽としてのカタルシスを十分与えている。聴いていて楽しい。本当にいいアルバムだなあ。
21世紀の今に至っても、今日性があるアルバムなんだと思う。
少し前に、このアルバムでピアノとシンセサイザーを弾いているブルーニッヒハオス(でいいかな)のアルバムを紹介し、そのなかでのシンセサイザの音の時間劣化が気になる、と書いた。このアルバムが素晴らしいのは、シンセサイザの音が決して装飾的でなく、その音である必然性を感じさせる、ということだ。後年のウェザーリポートのザヴィヌルのように。そこで気がついたのだけど、ヴェーバーの電気アコウスティックベース(ジャケットの裏面みて)の音がジャコっぽく感じさせる瞬間が多々あること。フレットレスベースでエフェクタ効かせると当然なんだけど、ジャコの独自性形成に影響していないかなあ、と感じたこと。ジャコはリーダ作以前、ブレイのI.A.I.からブレイやメセニーと一枚吹き込んでいるので(1974年録音)、ECM系の奏者を知る機会はあったんじゃないかと思う。まあ勝手な印象だけど。そう思うと、このアルバムも後年のウェザー・リポートの先駆的な側面もあるなあと思う。
録音もとてもよく、ベースのどっしりとした音を真ん中に、定位がしっかりした各楽器が奥行きを持って配置されている。全てにわたって気持ち良い。
それにしても、つい先日、ECMから最新作、ヴェーバーへのオマージジュが届いて聴いたばかり。半身不随になって、ベースが弾けなくなった彼のテープを使ってECM系奏者が共演した涙ものなのだけど、ヴェーバー含め、皆老いたことを改めて認識し、少し寂しくなった。ボクがジャズを聴きはじめた頃のスイング・ジャズの名手達と同じ状況じゃないか。その彼らの音楽が未だに光彩を放ち、新しさを感じさせるところに、ジャズシーンの在り方がこの30年で大きく変わったこと、に他ならない。勿論、彼らの音楽の素晴らしさ、は云うまでもないのだけど。
ジャケットはヴェーバー夫人の絵