折り重なる音の色彩は、北欧から英国にかけての冬の空、のよう。重く広がる雲、希に切れ目から見える暗い蒼。
そんな土地で生まれた音楽なんだろうな、と思う。バーレ・フィリップスは長い間、欧州の奏者だと思っていたのだけど、カルフォルニア生まれ。キャリアの初期はアメリカ。1960年代後半に欧州に渡っていて、その後は欧州で活動している。
このアルバムを聴いていると、サーマン、マーチンとのトリオが核になって構成されていることが良く分かる。3人のインタープレイは、思いの外、ジャズ的なビートと緊張感に満ちている。勿論、伝統的なジャズのビートではないのだけど。一方で、後年のサーマンのアルバムのような浮遊感を感じさせる場面も多い。そのようなジャズ的な即興と、浮遊音の間を行き交いして、このアルバムは構成されていて、どちらも面白い。
フィリップスの音は、浮遊するような空間のなかで抽象的な音のパーツを並べているときよりも、強靱なビートを叩き出す方が魅力的じゃないかなあ、と思った。確かに欧州のじゃなくて米国の奏者だなあ、と思わせる瞬間があるのだ。
後年のサーマンのアルバムのように、シンセサイザを多用していることも特徴であるが、ギミックのような使い方はあまりしていなくて抑制的。今聴いても違和感はあまりない。シンセサイザが、他のECMのアルバムの残響のような効果を与えていて、楽器と楽器の間が、淡色の音で埋め尽くされている感じ、が面白かった。
RVG録音を聴いた後なので、楽器ひとつひとつの音がとても明瞭で、やはりクラシックの録音から派生した音空間だなあ、と思った。
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参考記事:
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[ECM1076]Barre Phillips: Mountainscapes (1976)
Released: 1976
A1. Mountainscape I (Phillips, Surman, Feichtner, Martin) 5:54
A2. Mountainscape II (Phillips, Surman, Feichtner, Martin) 2:45
A3. Mountainscape III (Phillips, Surman, Feichtner, Martin) 4:21
A4. Mountainscape IV (Phillips, Surman, Feichtner, Martin) 4:25
B1. Mountainscape V (Phillips, Surman, Feichtner, Martin) 4:50
B2. Mountainscape VI (Phillips, Surman, Feichtner, Martin) 4:33
B3. Mountainscape VII (Phillips, Surman, Feichtner, Martin) 3:21
B4. Mountainscape VIII (Phillips, Surman, Feichtner, Martin) 7:12
Credits
Barre Phillips(b), John Surman (b-cl, synth, bs), Dieter Feichtner(synth), Stu Martin(ds, synth), John Abercrombie(g on B4)
Artwork: Frieder Grindler
Engineer: Martin Wieland
Producer: Manfred Eicher
Recorded March 1976 at Studio Bauer, Ludwigsburg
Back cover non-credited text reads:
Mountainscapes
Forces coming together,
Voices mixing,
Energy channeled to
Focalize.
Our inner circle-spiral
Points out to
The touchable Infinite