K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

赤坂:十五夜お月さまを眺める


 夏の終わりには雨が続いた。季節外れの時雨にあったような気分になった。今年の盛夏には東南アジアとか西アジアに行っていたので、なんとなく金澤の夏を逃したような気持ちになっていた。暑いのは苦手だから、それはそれで悪くない夏なのだけど。もっとも、そんな日々なので、昨年のような山登りができなくて、それがとても寂しいのだけど。

 そんな雨続きの日々が突然終わって、先週末から残暑のなかにいた。嫌な暑気がやってきたのだが、面白いもので呑むとか遊ぶとか活気が戻ってきたような感覚もあって、それも悪くなかったりしている。何を書いているのか、おかしくなってきたけど、季節が変わるときにはそんな気分になってしまうようだ。

 雨続きの日が終わったのが金曜日だったか。随分遅い時間まで呑んでいたのだけど、酒場から出ると煌煌と強い光を放つ月に気がついた。いつのまにか随分と肥えていて、てらてらとしていた。そんな瞬間に、秋がやってくるような気分になることが面白い。日曜日の夕暮れも、仕事場の屋上にあがって、夕暮れときに野田山のうえに翳む月を眺めて時間を過ごしていた。日に日に満ちていく。

 とても残念だったのは満月の夜、中秋の名月、には金澤にいなかったこと。仕事ででかけていたのだ。夜まで、窓のない会議場にいたので、すっかり気が滅入ってしまった。少し呑んだだけで、眠たくなってしまったので、ホテルでそのまま眠ってしまった。それがボクの今年の中秋の名月

 浅い眠り、嫌な夢、モノトーンの記憶のなかに所々、鮮やかな白が浮かび上がる。モノクロームの白ではなくて色彩としての白、何の色だろうか。そんな考えにもならないような夢の記憶のなかで微睡んでいた。それが柩を蓋う厚手の白布と気がついたところで目覚めた。夜明け。ホテルの大きな窓からは、淡いひかりのなかに新宿副都心が浮かんでいた。そして、仄かな消え入りそうな丸いひかりが浮かんでいた。それが月だと気がつくまで、暫くかかった。次第に浮かび上がる街、フェードアウトしていく月。それがボクが見た中秋の名月だった。