K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Derek Bailey: Ballads

 Improvised musicという分野がある。脱構築と称して,音楽を解体し尽くした廃墟の音楽じゃないのか。

 Free Jazzはジャズ音楽の規範からの解放であって,情念のようなものをナマの形で音に変えるような音楽であった,と思う。音楽の規範の観念は時代と共に遷移するから、今の時代からすると、何がFreeか分からない位、時代に溶けてしまっているものもある。

 だけどImprovised musicは音楽そのものを拒否している部分もあって、1980年代中頃の流行り言葉「パフォーマンス」(薄っぺらいなあ)とあわせて、何だか音楽みているのか、ドタバタ劇をみているのか分からない部分まであった。

 だからボクの中ではFree Jazzは時として好ましい音楽なのだけど、Improvised musicは音楽というククリの中には入らないし、聴く対象にはなり得なかった。だからImprovised musicの純度が高いものは,とてもしんどい。

 ハン・ベニンクやミシャ・メンゲルベルクのようなICP一派やペーター・ブレッツマンのようなFMP派までは、聴く切り口はまだあるのだけど、ディレク・ベイリーやエヴァン・パーカーのようなIncus派になると、お手上げ。

 これは、そのImprovised musicの極北であったディレク・ベイリーのギターソロ。Improvised musicではなくて、スタンダード集。亡くなる直前にバラードを弾いている。

 廃墟で口笛を吹いているように寒々しくも、ふっと心を捉える瞬間がある。とても不思議な音世界。

前述のように、もともと聴かない分野なのだけど、いつだったか成田へ行く途中で立ち寄った稲毛のキャンディで耳にしてからコビリついていた。夏が終わって、吹く風のなかに乾いた冬の匂いを感じるとき、まれに、このギターが響くときがあるのだ。20世紀のバベルが崩れつつある今、荒涼とした21世紀を死者として上空から眺めているような気分になれるのだ。

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Ballads

Ballads

 

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Derek Bailey: Ballads (2002,Tzadik)
   1. Laura
   2. What's New
   3. When Your Lover Has Gone
   4. Stella By Starlight
   5. My Melancholy Baby
   6. My Buddy
   7. Gone With The Wind
   8. Rockin' Chair
   9. Body And Soul
Derek Bailey(g)