K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

渋谷毅: Dream (1974) 変わらぬ眼差し (仙台土産)

 仙台に出かけると、必ず寄るレコード屋がある。南町通と一番町の通りの交点にあるvol. 1。そんなに沢山はないのだけど、あるべきものがあるような、ちょいと気になるレコードがぽつぽつある。今回は、渋谷毅のドリームを見つけて、小躍り。

 彼の最初のアルバムで、40年前の録音。鹿児島のパノニカ(いい名前だなあ)でのライヴ。まず、そのライヴハウスの空気感が見事に封印されていて、針を下ろした瞬間、親密で猥雑な、酒臭い空気が流れてきた。嬉しいね。ヴィレッジ・ヴァンガードエヴァンスには、ジンやワインの匂いが流れるならば、きっと芋焼酎に違いない。

 渋谷毅の演奏は、その後の録音とあまり変わらなくって、聴いていて次第に弛緩していくような酒場に向いたモノ。一曲を除き、いわゆるスタンダードなのだけど、米人奏者(白人・黒人問わず)とは違う距離感、のようなものが不思議な味わいとなっている。それが何だろうな、って首をひねったのだけど、ボクの2世代上である彼が持つ、戦後の米国音楽へのキラキラとしたような憧れじゃないかな、って思う。それが、時代を経ても変わらぬ眼差しで語られる、ような一枚。

 山本剛や今田勝、菅野邦彦と同時代に登場したヒトだけど、彼らから感じるジャズとは異質、じゃないかなって思う。ジャズ的語法で曲の魅力を語るのではなく、ウタものであるスタンダードのメロディに対する純な憧れが煌めきのようにきこえている、ように感じる。そう、浅川マキの唄伴での、ささやかだけど酔わせるような煌めき、と同じように。

 決して安い買い物ではなかたのだけど、仙台から帰って、新潟に旅立つ前のひととき、豊かな時間を過ごすことができたのだ。

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渋谷毅: Dream (1974, Trio)
A1. Memories of You
A2. All the Things You Are
A3. Prelude to a Kiss
A4. My Funny Valentine
B1. Autumn Leaves
B2. Blues No. 21
B3. Dream/After You've Gone
渋谷毅(p),松本龍宏(b),植松良高(ds),浜島純(ds)