あまり意識して聴いたことがないピアノ奏者だったJohn Taylor。強く意識したのは昨年(だったか)、新宿のディスク・ユニオンの店頭で聴いて、即入手したルイス・スチュアートのアルバム。そのなかでのスピード感に溢れたモーダルな演奏、に痺れた。その後から、ECMでの耽美的な演奏、を知った。このアルバムは新作(多分、遺作か)が出たので、何も考えずに購入したが、ジャズ的でもECM的でもない、(多分、異色作なんだろうな)って思うのだけど、聴き込んでいないから分からない。ボク自身の好みからすると、悪くない、というか、ジャズがいいなあ、という感覚とは別な良さ、がある。
アルバムを聴き始めて、あれっ、という感じだった。ヴォーカル(ノーマじゃない)やチューバ。ジャズ的な空気ではなくて、何だろう。HMVにメモがあったので引用(普段はこんなことしないのだけど、これは読んだ方がいいかと思ったので):
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2015年7月にこの世を去ったイギリスの鬼才ピアニスト、ジョン・テイラー。本作は、亡くなる直前に実弟でインディロック・バンドで活躍するドラマーのレオ、息子であるシンガー・ソングライターのアレックスらと録音されたという”ファミリー・プロジェクト・アルバム”。表題は、カート・ヴォネガットの短編小説「ハリスン・バージロン」を映画化したSF映画「2081」にインスパイアされたもの。
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そう家族での録音にチューバがベース代わりに入った、というもの。
咄嗟に2枚のアルバムを思い出した。一枚はヘイデンの晩年の家族吹き込み。カントリーが出てきて驚いたこと。彼の根っこがカントリーとは聞いていたが、聴くとやはり驚く。そして、カントリーは好みじゃないので、その後は聴いていない。きっと彼の味の一つだろうけど(メセニーとのデュオでの淡い味がそれだろう)。もう一枚のアルバムはギル・エヴァンスとスティングの海賊盤(イタリアのライヴ)。あのアルバム(素晴らしい)と空気感がとても近い。ギルのアルバムは、スティングの声を得て、彼が作りたかった音世界の完成版だった、と思わせるものがある。ジャズともロックとも云えない、彼らの世界が幻のように聳え立っている。このアルバムも、まさにそのような音世界で、スティングと同じ音世界の住人(じゃなかろうか)のようなアレックス・テイラーの声と、ジョン・テイラーのピアノが一瞬交差した軌跡を捉えている。やはり、ジャズともロックとも云えない世界が幻のように浮かび、流れている。とても自然な音の作りで、カントリーが米国の白人であるヘイデンの基底であるのなら、英国の白人たるテイラーの基底はこのような音、なのかもしれない、と思った。そして、それはとても美味しい。スティングやケイト・ブッシュなんかの曲と同じ感覚で聴いている。
最期のアルバムっていうと、様々な奏者のアルバムを思い出すのだけど、これも、その味の特異性と美味しさもあって、ボクの枯れそうな記憶のなかに上手く残りそうな気がする。
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John Taylor: 2081(2015, C.A.M.)
1. Doozy 1 (John Taylor, Lyrics: Alex Taylor ) 10:32
2. 2081 (John Taylor, Lyrics: Alex Taylor ) 7:41
3. Empress (John Taylor, Lyrics: Alex Taylor ) 5:23
4. DMG (John Taylor) 9:26
5. Deer On The Moon (John Taylor, Lyrics: Alex Taylor ) 9:53
6. Doozy 2 (John Taylor, Lyrics: Alex Taylor ) 4:53
John Taylor(p), Alex Taylor (vo), Oren Marshall(tuba), Leo Taylor(ds)
Engineer [Recording & Mixing Engineer] : Curtis Schwartz
Photograph: Andrea Boccalini
Producer: Ermanno Basso
Recorded and mixed in Ardingly, West Sussex on 25-27 November 2014 at Curtis Schwartz Studio