K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

(ECM1061) John Abercrombie, Dave Holland, Jack DeJohnette: Gateway (1975) 1970年代後半のECMの魅力

 アバークロンビーの前作Timelessから1年経たず、で録音されたアルバム。ヤン・ハマーのオルガンに換え、デイヴ・ホランドのベース。creditを見るとわかるが、ホランドの曲が中心。聴いてみても、ホランドが与える切れ味の良いロック的なビート、フリージャズ的な味、が素晴らしくデジョネットをinspireしていて、3者ががっつり組み合う、素晴らしいセッションになっている。マイルス・バンドのある時期のリズムセクションで、マクラフリンをクロンビーに変えたようなものだから、素晴らしくて当たり前か。マイルスが内向きなファンクに沈殿するなか、一つ前のリズム・セクションは、こんなヴェクトルだったんだあ、という楽しい聴き方をしている。

 前作よりも圧倒的に出来がいい。当時のジャズ、のまさにcontemporaryな部分を、鋭く、熱く切り取っていて、それをECMというレーベルの色に無理なく納めている。そう、音の温度感は冷たく、ECMそのもの。しかし有りがちな作為めいたものも感じないし、音の彩色も自然。すべてがバランスよく、出来ている。今のECMからすると ビートが強いが、それはECMが変わっただけであって、1970年代後半のECMの魅力、の一つだった音、だと思う。今となっては、望めない音楽なんだろうけど。SJ誌なんかでは、POPあるいは商業主義的な側面が強調されたcrossover/fusionだけど、それを、このメンバーでやると、ジャズの語法の中でフリーからロックまで、綺麗に消化・昇華されていることを見せつける、素晴らしいアルバムだと思う。

 アイヒャーのお膝元で全てを行っている、それが米国録音である前作との大きな違い、だと確信している。

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参考記事:

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[ECM1061] John Abercrombie, Dave Holland, Jack DeJohnette: Gateway (1975)
Released: 1975
A1. Back - Woods Song (D. Holland) 7:52
A2. Waiting (D. Holland) 2:09
A3. May Dance (D. Holland) 11:02
B1. Unshielded Desire (J. DeJohnette, J. Abercrombie) 4:50
B2. Jamala (D. Holland) 4:49
B3. Sorcery I (J. DeJohnette) 10:58
John Abercrombie(g), Dave Holland (b), Jack DeJohnette(ds)
Design [Cover]: Maja Weber
Layout: D. Bonhors
Photograph: A. Raggenbass, P. Maar
Engineer: Martin Wieland
Producer: Manfred Eicher
Recorded March 1975 at Tonstudio Bauer, Ludwigsburg.