K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Grigory Sokolov: 20 YEARS IN SOVIET ピアノの快感


 ストラヴィンスキーペトルーシュカプロコフィエフのピアノ・ソナタ7番は、快楽のためのピアノ曲、だといつも思う。

 ポリーニの無機的とも思える早い打鍵なんかも、快楽のためだと思えば、とても納得のいく速さで、しかもレコード盤の音の柔らかさが薬味のように降りかかると、これはもう快楽マシーンのようなもの、である。

 これはソコロフの旧ソ連時代の吹き込みからの復刻。CDではあるが、かなり音はよい、納得のできるもの。メロディアって凄いなあ、と思う。あのレコードの音がCDに載っている、ように思う。とは云え、LPがソコロフのLPが欲しくなったのも事実だけど。

 ソコロフの場合、ポリーニのような速さを感じるというよりは、数小節単位の「うねり」のようなものがあって、ゆるやかに起伏を感じさせるところが、スピードではない不思議な感覚、これもまた快楽に近いような愉悦をときとしてもたらす。やや、もったりとしたようで音に濁りはなく、とても美しい。このアルバムの2枚目、スタヴィンスキーとプロコフィエフの曲集は、悪魔的な魅力に満ちている。1枚目もスクリャービンの黒ミサ(ホロヴィッツが凄まじい)がったり、何だかイヤなアルバムにあたった、という嬉しさを感じている。

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シューベルト:ピアノ・ソナタ第14番イ短調 D.784,Op.143(1969年録音)
シューマン:謝肉祭 Op.9(1967年録音)
ショパン:マズルカ第13番イ短調 Op.17-4(1969年録音)、練習曲第8番ヘ長調 Op.10-8(1969年録音)、練習曲第23番イ短調 Op.25-11《木枯らし》(1966年録音)/スクリャービン:練習曲変ニ長調 Op.8-10(1966年録音)、ピアノ・ソナタ第9番 Op.68《黒ミサ》(1984年3月15日録音)
ストラヴィンスキー:ペトルーシュカからの3つの断章(1974年録音)
プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ第7番変ロ長調 Op.83《戦争ソナタ》(1966年録音)、ピアノ・ソナタ第8番変ロ長調 Op.84《戦争ソナタ》(1988年録音)