K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

JAZZファンであるボクが気に入ったクラシックピアノ曲集(JAZZ会おやすみ中なのだけど)


   この1年、友人たちとJazz会と称して自宅でJazzを聴きながら呑んでいる。月例会で,とても楽しい会。そうなのだけど、最近になって近所からのクレームがあって一時中断。借家の共同住宅なので住人の入れ替わりが多い。新しい階下のヒトが高感度のようで、静かに自粛することにした。音楽の音量じゃなくて、少なからぬ人数の喧騒や足音が問題なんだろうな。

  そんな訳で平日夜は3人くらいまでの少人数、休日昼間ならば今までのような人数でも大丈夫かな、と思っている。そんな感じで,再開できないかと考えているこの頃。手始めに主宰のK,クラシック師匠Mの3人で少人数編をやってみた。といってもビート音はクレームが怖いので、クラシックのピアノ曲という安全プランで試してみた。JAZZファンが気に入ったクラシックピアノ曲集、というテーマ。この1年聴いたクラシック曲の中で、気に入ったものを選んでみた。選んでみると、ヴェデルニコフリヒテルが抜けていたり、まったくもって満足、とは云えないものなのだけど。

  特にクレームもなかったので、やっぱり喧騒が問題。少人数なら大丈夫のよう。お友達のみなさま、また聴きましょう!


1. Vladimir Horowitz
 クラシックは堅苦しい教養音楽という固定観念が強く、興味はあったのだけど、ガイドブックで入手したアルバムは興味を引かなかった。そこに風穴を開けたのがM師匠から貰ったホロヴィッツのアンコール集。楽しいというより,狂気を孕んだ底抜けの演奏に戦慄してしまった。同時に、底の見えない愉悦のタネを見つけた感覚。さらにスクリャービン曲の魔術的な奥行きに痺れてしまった。ジャズに比べると、とてもイケない浮遊感覚があって、どこに連れて行かれるのか果てが見えない。晩年のモスクワのライヴになると、魔術的な幻惑の世界から、光が溢れるような穏やかな愉悦の世界に変貌している。普段聴かない古い作曲家の曲が懐に飛び込んできて驚いた。
Horowitz Encoresより星条旗よ永遠なれ (1951) 
25th Anniversay Of His American Debut よりScriabin Sonata NO9  (1953)
Horowitz In Moscow よりScarlatti: Sonata In E, K 380 - Andante Comodo (1986)
                      Scriabin: Etude In C Sharp Minor, Op. 2/1 - Andante(1986)
                      Moszkowski: Etincelles, Morceau Caracteristique Op. 36/6 - Allegro (1986)


2. Martha Argerich
 「夜のガスパール」でフランスの近代〜現代曲の面白さを教えてもらった。喚起されるイメエジが時としてエキセントリックなのだけど、ジャズを聴くときに近い音の世界がある。もっとも、ボクのジャズ入り口がECMだからかもしれないけど。ショスタコーヴィッチのピアノ協奏曲の勢いはとてつもなくて、違う種類のドライブ力に満ちている。それをアルヘリッチが演る訳だから、凄い。
Ravel集よりGaspard De La Nuit - 1. Ondine  (1974)
        Sonatine - 1. Modere (1974)
Shostakovich 集よりPiano Concerto #1 In C Minor, Op. 35 - 1. Allegro Moderato (2006)


3. Dmitri Shostakovich
 そのショスタコーヴィッチ自身もピアニストとして「やんちゃ」な感じで暴れる。暴れどころを自分で設定している訳だから、自作自演のピアノ協奏曲は面白い。ときとして純度の高い結晶のような音世界を覗かせたりしている。
Shostakovich: 7 Children's
Pieses, Preludes And Fugues, Concertoより Concerto#2  3.Moderato (1957)


4. Arturo Benedetti Michelangeli
 ミケランジェリの透き通った、特に天から舞い降りたような弱音に連れていかれる。どこに行くのか分からない恐ろしさ。東京でのライヴ録音の音の良さは秀逸で,そのヒトと思えない美音に浸れる。
Live in Tokyo 1973よりRavel曲集 (1973)
Ravel: Piano Concerto In G - 2. Adagio Assai (1958)


5.  Alexander Gavrylyuk
 先日、東京で聴いたガリリュック。プロコフィエフの戦争ソナタを師匠から初めて教えられたのがガリリュック。今となってはミケランジェリホロヴィッツもナマで聴けないのだけど、ボクらにはガリリュックがいる、って、とりあえず思うことにした。と、思わせる力を感じた。細かな音の粒立ちと,奔流のような勢いに魅了された。
In Recital 2007よりBalakirev: Islamey(2007)
MoonlighよりBeethoven: Piano Sonata No, 14 In C-Sharp Minor Op, 27-2 [Moonlight] :1 Adagio Sostenuet (2011)
Live in Recital 2005よりProkofiev: Piano Sonata No. 7(戦争ソナタ) In B-Flat Mjor, Op.83(2005)

[ここで同曲を更に別の2人が.誰でしょう]と流したのは、ArgerichとSultanovのライヴ。Argerichは荒れる中にも叙情性をみせるところもあって面白い。3分台で秒数を競うアスリートの世界なんだよね。アルヘリッチが3分10秒台でかなり早い。その後、調べると2分40秒という神業の演奏(カツァリス)もあったりして、面白い。でもソコロフのように4分近くても美しい演奏はあるけどね。


6. Ivo Pogorelich
旧ユーゴの人。かなり変わった演奏をする人らしいのだけど、このプロコフィエフも音が綺麗なので好きだ。
Prokofiev: Piano Sonata #6 In A, Op. 82, - 1. Allegro Moderato


7. Frank Braley
 少し前にいつも拝見しているブログで知った奏者。とにかく音が美しくて、独り聴いていると脱力することもある。何もできない。
Impressions よりL'Isle Joyeuse  (2008)
           Suite Bergamasque : Clair De Lune(2008)

8. Nikolai Petrov
 正確無比で打鍵がとても早い。所謂超絶技巧のヒト。でもタッチが攻撃的でなく、透明度が高い音なので好みにあう。
Mussorgsky : Pictures at an Exhibition抜粋


9.  Fazil Say
 昨年の来日時には金沢に来たので聴いた。クラシック曲も良かったのだけど,余興の自曲もよかった。トルコ人が弾くアナトリアをイメエジした曲に、気持ちが時間や場所を超えた乾いたユーラシア大陸のあちこちに浮遊した。
Black Earth (1997)
Alla Turca - Jazz (2006)


10. Shura Cherkassky
ホモのピアニスト、だそうだ。小柄なオヤジ顔なのだけど、音は流麗で美しい。ホロヴィッツ同様古い世代で、もうこの世にはいくて残念なピアニスト。日本公演のアンコール曲の「おてもやん」までやってます。
The last of the great piano romantics, vol.1よりFalla Ritual Fire Dance
                                        Okumara Otemoyan
                                       Ravel Pavane pur une infante defunte

 
11. Pierre-Laurent Aimard
 最近で一番気に入っているピアニスト。特にリゲッティとかメシアンの現代曲がいい。ややもすれば調性がはずれた攻撃的な音になってしまうと思うのだけど、とても柔らかいタッチで、もう一つの世界からの優しい誘いのような音楽になっている。気持ちがよい。
Carnegie Hall Recital 2002よりLigeti: Etudes For Piano, Book 1 - Cordes A Vide
                           Ligeti: Etudes For Piano, Book 1 - Automne A Varsovie
                           Ligeti: Etudes For Piano, Book 2 - Der Zauberlehrling
                          Messiaen: Vingt Regards Sur L’Enfant Jesus - 11. Premiere Communion De La Vierge
 Hommage A Messiaen よりMessiaen: Preludes - 1. La Colombe (2008)


12. Olli Mustonen
 プロコフィエフの束の間の幻影、という曲がとても好きだ。大きな宇宙に独り居るような孤独感。そんな孤独な自我が想起する儚い映像が浮かんでは消えていく。すべてが水に流れる芥のように。ムストネンの音はとても冷ややかで透明度が高いのだけど、人を包む暖かさがある不思議な音世界,だと思う。これも普段良く拝見するブログで知って,すっかり惹かれた。
         Prokofiev: Visions Fugitives, Op. 22 1-6 (1996)


13. Pascal Roge
ロジェはプーランクの曲で知って好きになった奏者。フォーレの曲も舞い上がるような軽やかな音で,気持ちがいい。
Faure: Piano Works Tonalis (1996)
           Impromptu No.2 in F minor, Op.31
            Impromptu No.3 in A flat major, Op.34

14. Michel Beroff
 ベロフも何だかんだと随分入手したように思う。そのなかでも気に入ったのがドビュッシーのChildren's Corner。やや強すぎるタッチの人なのだけど、それが綺麗に結晶となっているから。
       Debussy: Children's Corner(1979)


15.  Keith Jarrett
 最後はキース・ジャレット。ジャズ会プロデューサKクンが好きなキース。彼のショスタコーヴィッチは素直に綺麗な音。ECMの録音も魅力。結局,ジャズ会でも随分とECMを聴かせているのだけど、その境界線の上の音楽なんだよね、ケルンもこれも。ということが云いたかったのだ。
Shostakovich: Prelude & Fugue #7 In A, Op. 87抜