K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

原田芳雄のこと、ツゴイネルワイゼンのこと


 一昨日、原田芳雄が逝去。

 ボクにとっては鈴木清順ツゴイネルワイゼンの存在感が映画の中で圧倒的で、ヴィデオ・クリップのような絵、万華鏡のように場面が散りばめられている。はたちの頃に刷り込まれた画像の記憶はもはや拭えない。そのなかで原田の演じるインテリ無頼・中砂の存在感は圧倒的であり、原作である内田百鬼園の世界から大きく飛翔している。清順歌舞伎とも云える連作の続編、陽炎座での松田優作の何処か縛られたような固さ,と対照的である。

 ボクのなかでは随分前から自分の中の冥界に沈した世界であるので,改めて現世のヒトだったのだと、感慨を深くした。映画のなかで、鬼、を見てしまったから。だから、ボクのなかでは鬼籍にはいっていた。この世のヒトではなかった。

 新京極でこの映画をみて金縛りのようになった後に、数年で映画の舞台・鎌倉市内に住んだ。あの映画の世界がなんだかパラレル・ワールドのようにあって,その入口が何処かに潜んでいるように思えた頃を懐かしく思った。

 あれから実に30年が過ぎ去った。未だこの世に漂い、ホントウの鬼籍に入った彼のことをどのようにとらえたら良いか分からず、酒場で呑むばかりの夏の日々。