K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

菊地雅章: 再確認と発展(1970) 何ものかのようで何ものでもない

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 何ものかのようで何ものでもない音楽、だと思う。いつだったか、youtubeの音源へのコメントを見ていると、菊地は電化マイルスのコピーだよ、と海外の聴者からの書き込みがあった。確かに、そのように感じる部分もある、しかし、具体的に何処がマイルスのコピーだろうか、と音を追いかけると、するっとそのような箇所は逃げていき、見つからない。マイルスの音のようでそうでない、のだ。マイルスが進めた類型化したジャズからの脱出口としての、リズムの多様化を行っているだけなのだ。

 それだけではない。ミニマルのようで、そうでなかったり、浮遊する音のようで、そうでなかったり、じっくり聴くと実に捉え所がない。また1960年代の新主流派的なビートも混じる。不思議な音楽だと思う。だから菊地雅章の音楽、だとしか云いようがない。

 そのなかで、演奏者としての菊地雅章は、少ない音をゆっくりと打ち、漂うように音を組み立てていく。モンクの影響を感じさせるものの、モンクではない菊地、なのだ。

 これが実質的な菊地の初リーダ作なのだけど、彼の音楽的な風景が最後まで変わっていなかったように思える。重たい思惟の結果としての音。だから碁石のように、空間にポツポツと打たれていく印象なのだ。その分かりにくさが、孤高の印象、聴者からの遠い距離感であったように思う。

 不思議なアルバム・タイトルだと思っていたが、レコードの内ジャケットに、同じタイトルのメモが記載されていた。勿論、表面的には読めば分かる。彼が何を考え、何と格闘していたのか、実はよく分からないのである。

 そんなことを考えなくても、よくドライヴするビートに載せてポツ・ポツ弾く彼のピアノのグルーヴ感は気持ち良い。とりわけレコードで聴くと、音圧、音の自然な感じが素晴らしい。

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菊地雅章: 再確認と発展(1970, Philips)
A1. Tenacious Prayer Forever 18:28
A2.Roaming In Darkness 6:55
B1. Love Token 10:27
B2. Silence, Horison & A Dawn 3:15
B3. Piece To Peace 0:30
B4. Young Blood 11:43
菊地雅章 (p), 菊地雅洋 (p), 峰厚介 (as), 池田芳夫 (b), 村上寛 (ds), 岸田恵二 (ds)
1970年3月16日、東京、ビクター・スタジオにて録音

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