僅かな音の引力、のようなもの、を感じる。音の数が減れば減るほど、その引力が強まる。
その重力場のようなもののなかで、音が光彩を放つ。菊地雅章のピアノを聴いていると、そんな印象を受ける。
とにかく流れるようには音が出ない。音を確かめるように、音を出すことを躊躇するように、よろめく。
モンクに近いようにも感じるが、モンクのよろめきは技巧であり、よろめく速度の微係数で鋭いリズムを造り出しているようにきこえる。菊地さんのピアノがよろめくのは、音が生み出されるときが難産であり、苦悶のようなよろめき。その苦悶の跡が時として、強い重力場を生み出す。あの「うめき声」がまさにその背景音として、とてもふさわしいもの、に感じる。決して、アノ声が好ましい、という訳ではないのだけど。
このアルバムで、菊地さんの曲Little Abiの存在に気がついた。とても美しく、可愛らしい曲。それが、ライヴの空気の中にゆっくりと溶け込んでいく様が素晴らしい。音の数がさらに減っている、そしてピアノの残響音が鋭く、気持ちを揺さぶる。
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菊地雅章: Aftert hours 2 (1997, P JAZZ)
1. Laura (菊地雅章)
2. Blue Hawk (菊地雅章)
3. Little Abi (菊地雅章)
4. Summertime (菊地雅章)
菊地雅章(p)
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