K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

梅津和時:Do-Guwaw (1984) 「奇妙な味わい」の彼らなりの答え

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 1980年(ああ36年前!)、FM東京製作の「ゴールデン・ライブステージ」というライヴ番組でドイツのドナウエッシンゲン音楽祭での梅津和時原田依幸のデュオを取り上げた。司会は本多俊之の父、俊夫、ジャズ評論家(懐かしい職種!)。

 第二期山下洋輔に痺れていたボクは、より強いスピード感、より高い透明度、より枠のない構成力、のようなものを彼らに感じて、一発で引き込まれた。原田のピアノソロから梅津のサックスが飛び込んだときの破壊力、は衝撃的で、ドイツの聴き手も瞬間で引き込まれたことが分かった。 

(参考記事) 

音の見える風景 Chapter15 :JAZZTOKYO

 その後、ポツポツとレコードを買っていたいたのだけど、そのような「伝統的」なフリー・ジャズとは別にドクトル梅津バンドという、電化バンドのようなこともやっていて、当時、メルス・ジャズ・フェスティバルのアルバムで聴いて、これもまたいいなあ、と思ったものだ。何がいいか、まず梅津和時の姿勢、のようなものに惚れた。ドイツで、正しい日本語で「うめづ かずとき、かたやま ひろあき」(順番は忘れた)とメンバーを紹介していたのだ。未だ、彼だけじゃないかな、そんな感じ。

 演奏はジャズから離脱すべく遠心力を効かせるため、ベース・ドラムのビートを使ったもの。当時流行っていた「パンク・ジャズ」(ウルマー、タクマ、シャノン・ジャクソン、マテリアル、ラウンジ・リザーズなどなど)的とも云えるのだけど、日本のジャズの薫りをたっぷり含んだ、新宿的猥雑な音。このアルバムでも、タンゴやジンタまで含んでいるのだけど、芯のようにスタイリッシュな早川のベースが締めているので、ジャズ的な感じはそもそも薄くて、そのノン・ジャンル的グルーヴを楽しめるようになっている。梅津、片山はお約束的なフリー・ジャズ的な振幅の中にあって、全体で見事に調和している。

 今になって改めて聴いてみると、モンクやドルフィーに連なる「奇妙な味わい」の彼らなりの答えを出そうとした軌跡じゃないかなあ、と思う。生活向上委員会を含めて。

 そんな訳で、今夏、鹿児島でみつけたレコードをやっと聴いて、懐かしくも忘れもしないドクトル梅津バンドを久しぶりに聴いた。かつて本牧ジャズ祭で聴いたのが最後のライヴだったのだけど、久しぶりに聴きたくなったなあ、生で。金沢ではタイミングがうまく合っていない。残念。

 このバンド、再会セッションをやっているのですね! 聴きたいなあ。

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梅津和時:Do-Guwaw (1984, キャニオン)
A1. Bumpy mountain on the back
A2. Munoo
A3. Tango tango
B1. The Cranp
B2. Crocodile by strarlight
B3. 800 Ton
梅津和時(as,b-cl, ss, g, pianica, vo), 片山広明(ts, brs, ss, vo), 早川岳晴(b, vo), 菊地隆(ds, vo)