K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

早春の渓流に佇む

 大きなイワナが出てくるのは、水温がある温度を超えて数日経過してから、のように思える。だからシーズンの頭に山奥に出かけても、水温は低く、釣果は渋い。それでも渓流の深部に出かけたときに得られる開放感には代えがたいものがあり、日曜も出かけてしまった。

 ワカンとかスノウシューを持たずに行ったので、入渓するまでの路の雪が柔らかく、難渋した。沢でのブロック雪崩れが気になったが、少雪でもあり、暖かい日が多かったので、沢沿いの急斜面の雪はほとんどが落ちていた。空は青く、風は柔らかく、鳥のさえずりが聞こえる。そんな蠱惑的な日に、沢で竿を伸ばす。何とも贅沢だ。誰もいない。

 時折、金属音のような音が聞こえる。鳥、には聞こえない。熊にしては、低いように思える。対岸の雪面に小さな子供のような黒い影が走る。小熊かと緊張したが、群れてきた。猿。十匹くらいの猿が尾根を越えていた。さっきのは猿声と理解した。杜甫の詩で知る猿声は、あれか、どうか。

 そんなことを思いながら上流へ歩を進めたが、深みからは岩魚は出なかった。まあ、想像していたことだし、それでもいいか、と思った。昨年もこの時期はそうだ。この沢に入ったのは、ボクが最初だった。それで十分なのだ。

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