1984年の夏頃だっただろうか。当時、社会人になったばかりで、電機会社の社員寮に住んでいた頃、近所の社宅の先輩の家でつげ義春の「ねじ式」を読んだ。映画「ツゴイネルワイゼン」を見たときと同じような衝撃だった。未だに映画も「ツゴイネルワイゼン」も「ねじ式」も破壊力は変わらず、30年以上経った今も眺めている。
「COMICばく」とつげ義春―もうひとつのマンガ史 (Fukutake Books)
- 作者: 夜久弘
- 出版社/メーカー: 福武書店
- 発売日: 1989/08
- メディア: 単行本
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そんな頃、新聞でつげ義春が再び描き始めたという記事を読んだ。早々に街の本屋で掲載雑誌「COMICばく」を入手した。既に2号目に入っていた記憶があるから、1984年の冬頃だろうか。漫画には詳しくなかったが、つげ義春だけでなく、多くの「鬼才」あるいは「奇才」と呼んでも良いような個性的な表現者が並んでいて、非常に面白い雑誌だった。感覚的に云うと、ATGの映画の漫画版のような、猥雑で尖った感じが好きだった。
その季刊誌「COMICばく」の編集をやっていたのが著者の夜久弘。まさにつげ義春の執筆再開に合わせて作り、営業上の不振と、彼の断筆(不安神経症による)により、15号で休刊。その間4年弱。僅か1万部にも満たない発行部数でよくもったものだ。その間のエピソードだけでできた本。取り立てて面白い本でもないが、リアルなつげの様子は興味深いし、当時の雑誌の様子が「目次」のようにリアルに浮かび上がる。懐かしい。
自分自身、社会や会社への不適応感で一杯な時代に読んだ雑誌だったので、編集話のドロドロが妙にしっくり。数年前、夜久氏は亡くならあ。ランナーだったとは意外。
そして、つげ義春は存命。一番生命力の弱そうな人なのだけど、実は強いのだろうなあ、と思った。