K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Evan Parker, Mark Nauseef , Toma Gouband: As The Wind (2012) 本当にこのアルバムは素晴らしい

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1980年頃のフリージャズへの入り口は「いんたーぷれい8」の山下洋輔。さらにimprovised musicへの入り口は同志社大学での近藤等則とトリスタン・ホンジンガーのデュオ。ICPオーケストラを聴いたあたりが、気持ちのなかのピークだった。その頃、エヴァン・パーカーのフィンガーパレスのライヴに痺れていたのが、昨日のようだ。

こんな音楽を聴くのも憑きもののようなもので、ふっと落ちると、関係のレコード数十枚を不思議な気持ちで見ていたものだ。

再び取り憑いたのは、つい1年半前。21世紀美術館でのエヴァン・パーカーのソロ。フィンガーパレスのアルバムを聴いてから、実に35年くらい経って、ライヴを聴いた訳だ。ノン・ブレスでの、天頂への階梯のような音に魅了されて、新たにこの音を聴く意味、のようなものがボクの中に目覚めてしまった。

それでもエヴァン・パーカーに付きまとう印象があって、アクロバットなノン・ブレスのソロ芸のワン・パターンと。だからカンパニーのメンバーだとディレク・ベイリーに強く惹かれたし、やはりICPがいいなあ、なんて思っていた。

その印象が変わったのはECMでのポール・ブレイとのアルバムを聴いてから。もっともっと多様な表現、それも抑制的な音で場を作る力量、を知った。

それから、もう少しエヴァン・パーカーをちゃんと知りたいと思ってelectro acoustic ensembleのアルバムを何枚か仕入れたが、まだ自分のなかで確たる印象が結像していない。

 そんなとき、いつも参考にしているブログで、このアルバムを知った。入手に手間取ったが、最近、素晴らしいルートがわかり、パーカーばかり4枚も購入。まずは、このアルバムを聴いた。

前置きがまた長くなった(年寄りになってきた)。

本当にこのアルバムは素晴らしい。打楽器の二人が作る音場、素朴ではあるが、ある種の結界を結んでいるようにさえ聴こえる、のなかで抑制的にパーカーが音を流す。それは確かに気流のようでもあり、水に墨を流したようでもある。抑制的、と書いたのは印象であって、実に多様な音を出している、時にはノン・ブレスの例の音も、である。しかし、その淡い印象は一環していて、音が与える印象を強く制御している。そして、遠くから張られる結界のような打楽器。

いつだったか読んだ本曰く:

太古の昔、鈴の源流は鐸であって(銅鐸とか)、そこには舌はなく、大気の流れが鐸と共鳴する微かな音を感じていた、と。いつじか、その微かな音を感知する繊細な能力を失い、舌をつけたと。

このアルバムを聴きながら、パーカーのサックスの音が鐸を共鳴させる大気の流れ、乱流、のような装いである、ように感じた。

モノクロームの心象風景なのだけど、またそこから多彩な印象が弾けていく、意識への作用がすこぶる面白い体験となった。

 

本当にこのアルバムは素晴らしい。

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Evan Parker, Mark Nauseef , Toma Gouband: As The Wind (2012, psi)
1. As The Wind 13:36
2. Seeking The Bubble Reputation 6:59
3. Like A Wild-goose Flies 4:42
4. Make Noise Enough 11:53
5. Ambitious For A Motley Coat 10:38
6. As A Weasel Sucks Eggs 1:21
7. Come Warble, Come 1:21
8. Pipes And Whistles In His Sound 3:52
9. Sane Everything 6:41
Evan Parker(ss), Mark Nauseef (perc),Toma Gouband(perc: Lithophones)
Producer : Evan Parker, Martin Davidson
Recording]: Adam Skeaping
Recorded at St Peter's Whitstable 22 September 2012